【特集・海外化粧品】流通の多様化に応える海外化粧品

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【特集・海外化粧品】流通の多様化に応える海外化粧品

 2011年上半期の化粧品輸入実績は6.9%減の792億7000万円と前年を割り込んだ。やはり震災の影響は大きく、中でもフレグランスとヘアケアの落ち込みが大きかった。震災直後は休館や早仕舞いを余儀なくされた百貨店を販売拠点とする外資系ブランドが多かったことも、この数字に影を落としている。各社の後半の盛り返しに期待したいところだ。

自宅待機から節電対策まで、震災の影響は多方面に及ぶ

 今回の取材で目立ったコメントは「3~4月は震災の影響で売上げが落ち込んだが、5~6月は持ち直した」というもの。震災発生から1週間前後の間、BCを自宅待機させたグループもあった。余震が続いた3~4月は外出さえままならない状態が続き、来店者の店舗における滞在時間も短くなったという。このためある関係者は「3~4月はカウンターに併設したキャビンの使用を控えるお客様が多かった。ゆっくりくつろぐどころではなく、キャビンを利用すると時間もかかってしまうからだろう」と指摘する。

 節電による電飾の使用制限も痛手だった。このため、コルトンに電気を使わなくても映えるフィルムや紙焼きに貼り替えるなどの対応で演出を工夫するブランドもみられた。

 3~4月の外出控えの反動か、夏場は比較的堅調に推移したブランドが多かった。サマーセールを例年より前倒しで開催した店舗もあり、7月からは館全体の客数も回復した。しかし9月は台風の影響で苦戦したブランドもあり「売上げが前年プラスの月がなかなか連続しない」(関係者)と、リーマンショック前の状態に戻るにはまだ時間がかかりそうだ。円高を踏まえた価格改定の動きもみられない。

 客単価の高いブランドの場合、ロイヤル顧客を1人失うとその穴を埋めるのに新客3人が必要になるという。やむなく客単価を上げることになってしまうのだ。

ECサイトへの参入が続出、店頭誘致や接客への活用も

 百貨店を販売拠点とする外資系ブランドは少なくないが、今回の取材で指摘が目立ったのは「百貨店の店舗数は今後減少していくので、新たな販路にも挑戦していかなければならない。これによりリスクも分散できる」というものだった。

 もちろん百貨店を主軸とする戦略は変わらないが、出店の空白地域をカバーすべく専門店にも活路を見出したり、ECサイトに注力する動きも出てきている。「中長期的にみてECサイトの売上げを全体の5%くらいまで持って行きたい」と前向きな姿勢をみせるブランドもみられた。

 Eコマースは比較的米国系の進出が早かったが、今年に入ってロレアルグループも開始するなど参入ブランドは増加傾向にある。公式サイトにWeb限定セットや先行発売を盛り込んだブランドも多く、サイトで商品情報やクチコミをチェックしてから店頭に足を運ぶ人も増えた。この流れを踏まえ、クリニークのように一部の店頭にタブレット端末を設置するブランドも出てきている。

 一方、バラエティストアなどのセルフ流通ではこの10年で単価の下落が進み、いわゆるプチプライスブランドが台頭しつつある。取材では「500円以上の口紅を売るのは難しい」という厳しい指摘さえあった。

オーガニック路線の台頭、競争激化で差別化対策を

 海外化粧品で注目されている路線の1つが自然派やオーガニック系のブランドである。特に震災以降は原発の影響もあって安心・安全な処方や企業の環境に取り組む姿勢を重要視する消費者が増えたと言われている。

 オーガニック系のブランド担当者によると、オーガニック先進地域であるヨーロッパでは自然化粧品の市場シェアは伸びているものの、その路線で愛用のブランドを統一している人は全体の5%に過ぎず、ケミカル製品と組み合わせて使用する人が大半で、日本でも同様の傾向がみられるという。オーガニックブランドの参入が相次いで競争は激化しており、ユーザーがどのような基準で商品を選ぶのかを把握し、商品特性の伝え方にも工夫する必要が出てきた。

 海外化粧品を取り巻く環境は厳しい。ニーズや流通の多様化が進む中、商品づくり、売場づくりいずれにおいても柔軟な対応が求められている。

※【週刊粧業】海外化粧品特集はコチラ→(2012年2011年

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