花王、健全な表皮の形成におけるヒアルロン酸の働きを解明

粧業日報 2023年6月29日号 4ページ

カンタンに言うと

  • ヒアルロン酸の構成成分N-アセチルグルコサミンの誘導体を新たに開発
花王、健全な表皮の形成におけるヒアルロン酸の働きを解明
 花王は、表皮ヒアルロン酸の産生を高めることにより、十分な厚みがあり、うるおいとハリに満ちた表皮の形成につながることを明らかにした。さらに、新たに開発したN-アセチルグルコサミンの誘導体が、表皮細胞によるヒアルロン酸産生を促進することを確認した。研究成果の一部は、6月4~8日に米国で開催された「第14回国際ヒアルロン酸学会(International Society for Hyaluronan Science・14th International Conference)」にて発表した。

 加齢に伴う変化の1つとして、表皮の厚みが減少することが知られているが、表皮の厚みの低下は真皮に比べて早い年代から始まり、ハリのなさやなめらかさの低下といった見た目の美しさが損なわれる要因となる。

 表皮の増殖と角化の繰り返しはターンオーバーと呼ばれ、このサイクルが正常であると健全な表皮が形成される。一方、表皮には血管が通っていないため、重層した細胞同士の空間を維持し、細胞への栄養素の供給や細胞からの代謝産物の通り道を確保するといった役割は、ヒアルロン酸が担っていると考えられている。

 花王グループでは、1981年より、皮膚におけるヒアルロン酸の合成・分解のしくみやその制御について、業界の先駆けとなる多くの知見を見出してきた。2002年には表皮におけるヒアルロン酸合成のしくみを遺伝子レベルで解明し、04年にはN-アセチルグルコサミンの表皮ヒアルロン酸産生促進作用を発見している。しかし、表皮ヒアルロン酸が、表皮細胞のターンオーバーや表皮形成、皮膚性状にどのような影響を及ぼすかについては明らかになっていなかった。

 今回花王は、N-アセチルグルコサミンの構造を改変し、さらにその安定性を高めた「1-エチル-β-N-アセチルグルコサミニド」を新たに開発した。培養した表皮細胞にこの新たな「N-アセチルグルコサミン誘導体」を添加したところ、ヒアルロン酸の産生を顕著に高めることが確認できた。そのメカニズムとして、「1-エチル-β-N-アセチルグルコサミニド」は表皮細胞の中に取り込まれた後、細胞が持つ酵素(β-N-アセチルグルコサミニダーゼ)の働きによってN-アセチルグルコサミンに変換され、ヒアルロン酸の材料となってヒアルロン酸の産生を促進することがわかった。

 さらに、新規N-アセチルグルコサミン誘導体を3次元培養ヒト皮膚モデルに添加したところ、表皮ヒアルロン酸が増加するとともに、基底層における表皮細胞の増殖、有棘層から顆粒層における表皮細胞の角化が促進し、表皮の厚みが増加することが確認できた。一方、これらの効果は、β-N-アセチルグルコサミニダーゼの働きを阻害して、N-アセチルグルコサミン誘導体をN-アセチルグルコサミンへ変換できないようにすると、いずれも消失した。これにより、表皮ヒアルロン酸の役割として、表皮細胞の増殖と角化を高め、健全な表皮形成を促進することが初めて示された。

 新成分の効果を検証すべく、33名の女性(40~58歳)を対象に、新成分を配合した製剤と、配合していない製剤を顔の左右それぞれに8週間使用してもらい、肌状態を比較した。その結果、新成分配合製剤を使用した方の肌では、角層水分量が上昇し、肌のハリ(皮膚粘弾性)が高まったことを確認した。

 検証実験において、うるおいやハリといった変化を肌でも確認できたことから、表皮ヒアルロン酸へのアプローチは新しいスキンケア技術を開発する上で重要なターゲットになり得ることが示された。今後も、ヒアルロン酸の研究を通じて、健やかで美しい肌に導く技術の向上を目指していく。
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