日本色材工業研究所は、今年度より「コロナからの復活と将来の成長に向けた事業基盤の再構築」をテーマとする5カ年の新たな中期事業戦略ビジョンをスタートした。
直近の受注状況と新ビジョンの重点戦略について、奥村浩士会長に話を伺った。
――まずは、3月からスタートした今年度の受注状況についてお聞かせください。
奥村 コロナ禍で大きく影響を受けていたメークアップ市場が、今年に入りようやく持ち直しつつある。カテゴリーでは、マスカラをはじめとする目もと関連が引き続き好調で、そこへ口紅の受注が戻ってきている。
当社では、コロナになる何十年も前からマスクに口紅がつきにくい処方技術を持っており、それを改良した製品の採用が徐々に広がっている。こうした受注状況を踏まえ、売上に関してはコロナ前の19年比で75%程度まで回復してきている。
また、昨年度から引き続き筋肉質な企業経営を目指す方針は変わらず、売上原価・販管費などの各種コスト圧縮に努めており、直近の第2四半期(6~8月)は間違いなく黒字になる見通しだ。
ただし、昨今の原料価格の高騰により、原料メーカーからの値上げ要求を試算した結果、年間で1億5000万円もの価格上昇が推測される。そのため、今後も筋肉質な企業経営をより一層進めていかなければならない。
――今年度から新たな中長期事業戦略ビジョンがスタートしました。2030年に創業100周年の節目を迎える貴社では今後、どのような取り組みを進めていきますか。
奥村 人口が減少の一途を辿る日本市場は今後、間違いなくシュリンクするため、海外輸出が成長の鍵となる。そこで重要なポイントが、世界各国で進んでいる化粧品規制への対応だ。
ヨーロッパでは、化粧品に含まれるナノマテリアルの配合禁止を打ち出し、クリーンビューティ視点での規制強化が進んでいる。また、北米では発がん性のあるアスベストが混入している危険性から、タルクフリーのトレンドが加速している。
我々はフランスの子会社2社(テプニエ・日本色材フランス)でこれまで、クリーンビューティへの要求レベルが高いヨーロッパで先行してメークアップ化粧品を提供してきたアドバンテージがある。また、国際的な評価機関「EcoVadis(エコバディス)」より、2018年から毎年シルバー評価を獲得し続けている実績もある。
現在、日本色材グループ全体での海外比率は約45%で、このうち25%が日本から海外のブランド・メーカーへの輸出分であり、我々の強みを活かして将来的には50%まで引き上げていきたい。