共同印刷、サイネージ付き什器全体を活性化

週刊粧業 2022年10月17日号 37ページ

カンタンに言うと

  • 制作技術の優位性で事業拡大へ
  • コンテンツの切り換えをサポート、広告運用を含めて事業拡大を検討
共同印刷、サイネージ付き什器全体を活性化
 共同印刷は流通業のデジタル化の動きに対応し、アプリやデジタルサイネージの事業を強化している。その一環で20年秋、デジタルサイネージと販売什器を一体化した「Digital Gondola(デジタルゴンドラ)」をリリースした。

 SM、ディスカウントストア、ドラッグストア、GMSなどの店頭に導入が進んでいる。デジタルサイネージの動画配信などの技術が進化し、市場が右肩上がりの成長を続ける中、コンテンツの制作技術の優位性を活かしながら、事業を拡大していく。デジタルゴンドラの普及にとどまらず、サイネージ付き什器トータルの活性化に取り組む。

 小売の現場では人手不足によって、デジタルの活用が進行している。プロモーションメディア事業部の石堂昌克事業部長は、店頭販促でのデジタルの活用が発展途上の段階にあることを指摘する。

 「われわれの部署は従来、印刷を核に販売促進支援を生業としてきた。近年、スマホの普及やデジタル化の促進によって、コミュニケーション手段が多様化している中、Webやアプリ制作といったデジタル領域に力を入れている。かつては紙・樹脂・金属製による販促什器の制作や売場のメンテナンス、推奨販売員の派遣といったフィジカルな支援を続けてきたが、現在は店頭販促のデジタル化支援として、デジタルサイネージに力を入れている」

 SDGsの流れの中で店頭什器に再生素材を使用したり、プラスチックを減らそうという動きと同時に、サイネージのニーズも高まっている。デジタルゴンドラの開発の経緯について、同事業部企画開発課の領家隆志課長は次のように説明する。

 「従来のデジタルサイネージは商品と異なる場所に設置され、有効活用できていないという課題を踏まえて開発した。デジタルサイネージと販売什器が一体化していることと、コンテンツを外部から簡単に切り換える仕組みを搭載していることが特徴となる。

 加えて、汎用的に使える形状・仕様で長く使えることをコンセプトに開発した」

 発売から約2年が経過したが、ユーザーの要望を取り入れ、改善しながら、ラインアップ、オプションを増やしてきた。4画面タイプ、タテ1画面タイプ、ヨコ1画面タイプが基本ラインアップで、什器の棚スペースの拡大や高さの変更など、バリエーションを増やし、オリジナル仕様の什器設計にも対応する。4画面タイプは高さ1.9m超でインパクトがあり、大型店での展開に相応しい。最も需要が多いのがタテ1画面タイプ(幅45㎝×高さ1.65m×奥行45㎝)で、什器の追加や両側に専用ゴンドラを併設することで、エンド展開も可能になる。

 当初は初期費用が無料で、毎月サービス利用料を支払うサブスクリプション型での利用を想定していたが、現在は機器を買い取り、システム使用料を支払うケースが多い。共同印刷としては機器の販売、システム使用料のほか、コンテンツ配信の運用サポートや動画制作による運用管理費の収入源がある。

 ユーザーの状況について、同事業部の新垣健担当課長は次のように説明する。

 「小売業でDXの推進が課題となっている中、初期投資という部分でハードルがあるようだ。デジタルサイネージについては、店舗設備と販促物との区分けも難しく、GMS、ドラッグストア、ディスカントストアなどでの導入や運用にあたり、小売企業やメーカー、広告会社など様々な立ち位置で導入が進められ、様子をみられている状況にもある。

 ただ、これから大きく変わろうとしていることは間違いないと認識している。現在、機器を購入いただくケースが多いので、少しでも導入しやすくなるようビジネスモデルの見直しを行っていきたい」

コンテンツの切り換えをサポート
広告運用を含めて事業拡大を検討

 小売業の自主的なデジタルゴンドラの導入については、過渡期にあることを指摘する。「大手の場合、デジタルサイネージを積極的に導入されているが、販売促進用のものは一部の基幹店に限定され、全店導入には至らず、まだトライアルの段階にある。また、動画配信、切り換えの運用面がネックとなっている。小売業はこれまで販促物について、メーカーに依存してきたことで、自らコンテンツをつくり運用する体制が整っていない。デジタルゴンドラは素材を組み合わせて簡単につくれるコンテンツ管理のシステム(CMS)を導入しており、そこから広がっていくことを期待している」(領家課長)

 現状でCMSを使いこなしているユーザーからは、複数画面が連動したコンテンツなども簡単につくれ、店舗ごとの切り換え配信も簡単にできる仕組みであることから、使いやすいとの評価を得ているという。「複数画面など特徴ある形状を活かすためには、放映するコンテンツも重要になってくる。当社で制作したコンテンツは什器の良さを最大限に高めることができると、高い評価をいただいている」(同)

 一方、デジタルゴンドラの導入による売上アップなど、数値面での効果検証の必要性が指摘される。「従来のPOPも同じだが、効果の検証は難しい。ただオプションでAIカメラがあり、デジタルゴンドラに取り付けることで、通行客数やPOPをみた人の性別、年齢、視聴時間を計測できる。販売実績と組み合わせて、どの程度、売上につながったかということを感覚的に理解することはできるが、購入に至るには商品力、価格訴求力、コンテンツ訴求力等様々な要因があるため、販売実績ではなく、消費者への情報の到達度や売場への満足度で判断していただきたい。また、コンテンツを自由に変えられる特徴をもつ什器ではあるが、その運用が難しいことが指摘される。そこは、きちんと企画を考えてコンテンツを変えていくことに労力やコストをかけていくことが必要だという文化をつくっていかなければならない」(同)

 さらに、来店する顧客の満足度を高めることも視野に入れている。「発売から2年近くが経過し、新たな課題がみえ臨機応変に対応した中で、最終的には店舗に来店されるお客さまがご覧になって喜んでいただき、売上につながればいいと考えている。数あるサイネージのサービスの中で、われわれはコンテンツをつくれるという優位性があるので、そこも強く訴求していきたい」(新垣氏)

 今後の事業拡大に向け、デジタルゴンドラをはじめ右肩上がりの成長を続けるデジタルサイネージを組み込んだ店頭什器により、店頭販促物のシェアを伸ばしていく考えだ。

 「将来的には、小売店舗に当社のデジタルゴンドラ什器を導入して、デジタルゴンドラを核とした売場を拡大し、広告運用も含めて、事業を拡大していきたい」(石堂事業部長)
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