RAPHAS JAPAN、医薬品・化粧品におけるマイクロニードルの可能性を紹介

C&T 2022年12月15日号 38ページ

カンタンに言うと

  • 本数ではなく正しい間隔で皮膚の弾力と針の長さ・強度を考慮した設計が重要に
RAPHAS JAPAN、医薬品・化粧品におけるマイクロニードルの可能性を紹介
 RAPHAS JAPAN(ラパスジャパン)は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の一種で、医薬品・医療機器で活用されている「溶解性マイクロニードル」を用いて、美容成分を効率よく肌に届け、浸透力と安定性に優れたマイクロニードルパッチ化粧品の製造・販売事業を展開している。

 権有利(グォン・ユリ)社長によると、マイクロニードルパッチは元々、医薬品として体内に薬剤を届けるために開発されたもので、1952年にアメリカで研究がスタートしたという。

 「効率的に薬剤を体内へ届ける方法は注射だが、注射針による痛みをはじめ、コロナワクチンのように液体の薬剤を『冷蔵・冷凍』で保管・輸送するためのコールドチェーンの確保、さらに汚染された注射針(医療廃棄物)による死者が年間130万人を超えるといった課題があり、このような背景からマイクロニードルが開発された」(権社長)

 一般的なマイクロニードルの製造方法は、遠心分離機の金型に有効成分を投入し、熱や光で乾燥・固形化する「Micromolding」方式が主流となっている。同方式では、12~48時間の乾燥工程に加え、金型から取り外した後、パッチ素材に張り付ける別工程も必要で量産化が難しく、さらには乾燥時に熱や光を加えるため、配合成分の安定性に課題があった。

 それに対し、ラパスジャパンでは、パッチの上に有効成分からなる小滴(Droplet)を落とし、反対側のパッチを突き合わせてから伸ばして(Extension)マイクロニードルを成形した後、常温の風で固めて分離する「DEN(Droplet Extension)」方式を約15年前に独自開発した。

 日本だけでなく、韓国やアメリカ、中国などで国際特許を持つDEN方式は、金型を使わずパッチを突き合わせ、配合成分の粘性を活用して引っ張り上げることで針を成形する。これにより、上下2つのマイクロニードルパッチが同時に製造できるほか、乾燥工程が僅か5分程度と従来のMicromolding方法から飛躍的に時間を短縮し、大量生産を実現した。さらに乾燥工程では熱や光を使用しないため、配合する有効成分の安定性が高まった。

 「常温の風で乾燥させて温度が一切変化しないDEN方式によって、熱やUVなどに弱い有効成分の配合が可能になり、様々なバリエーションのマイクロニードルパッチが開発できるようになった。我々が製造する溶解性マイクロニードルは、肌内部にある水分によって溶け込む物性を持つヒアルロン酸をベースとし、うるおい成分のコラーゲンや美白成分のアスコルビン酸、抗シワ成分のナイアシンアミドなど、様々な有効成分を組み合わせることが可能で、様々な種類があるマイクロニードルの中でも針そのものが体内に入れたい成分で作られているため、安全性が高く副作用が少ない。今回、当社では新たに『レチノール』を安定化させたマイクロニードルパッチの開発に成功し、3年間の安全性試験を経て特許を取得した。また、溶解性マイクロニードルの分野では初めて生産ラインの全自動化を実現し、製造工程の改善を常に図ることで、こうした画期的な製品の開発につながっている」(権社長)



本数ではなく正しい間隔で皮膚の弾力と
針の長さ・強度を考慮した設計が重要に

 ラパスジャパンでは、金型を使用しないDEN方式により、マイクロニードルの長さやパッチの形状、さらには配合成分を柔軟に変更でき、付着する部位に合わせて一からオリジナルで自由に製品設計することが可能だ。

 権社長は、肌への浸透力を持つマイクロニードルの開発で重要なポイントについて、次のように指摘する。

 「マイクロニードルは、針の間隔があまりにも密集していると肌の中に成分が入りにくいことが確認されており、浸透力を高めるために針の本数が単に多ければいいということではなく、正しい間隔で皮膚の弾力も考慮しながら最適な形状や強度、長さで設計することが重要だ。マイクロニードルの開発では、このように皮膚の中にしっかりと届ける浸透力の高い設計であるか、配合成分は十分な量が固形化されているか、そして成分の安定性が図れる製造方法であるかを是非チェックしてもらいたい」

 31種類の特許を保有するDEN方式では、皮膚の弾力やニードルの間隔も考慮した上で、角質層に成分を届ける長さでマイクロニードルパッチを設計している。それを裏付けるデータとして、市販のマイクロニードルパッチと1枚あたりのヒアルロン酸含有量を比較した試験では、同社のマイクロニードルパッチは本数が少ないものの、含有量と長さはいずれも上回る結果となったという。

 「本数が多いからといって有効成分が沢山届くというものではなく、パッチの大きさやニードルの長さ、体積等が配合成分の含有量に影響を与えることをこの結果が示している。針の本数が多い点をプロモーションしたマイクロニードル製品が一部で見受けられるが、肌への浸透力を語る上で繰り返しになるが、本数ではなく正しい間隔で皮膚の弾力も考慮しながら最適な形状や強度、長さで設計すること、そして配合成分の量と安定性が重要だ」(権社長)

 物理的に肌内部へ有効成分を届けるマイクロニードルパッチは近年、肌への浸透力の高さから化粧品分野での採用が広がっているようだ。



 実際に同社が行ったレチノール配合の乳液とマイクロニードルパッチの浸透比較では、パッチのほうが乳液より浸透するレチノールの量が259%も多く、パッチ1枚の有効成分の浸透量は乳液10回分に相当したという。

 溶解性マイクロニードルの新技術では、複数のレイヤーごとに異なる有効成分を組み合わせた「パターニング・ダブルレイヤーマイクロニードル技術」を開発し、DDSの能力を最大限に引き上げ、正確な浸透率と密着感を高めた利便性を実現した。

 「物理的に皮膚の中へ成分を届けるマイクロニードルパッチの特性を活かして、化粧品分野では本来肌に合った成分を補う発想で製品を設計している。医薬品分野では現在、傷跡ケアの臨床試験を行っているほか、アレルギー抑制など免疫治療剤の開発に努めている。今後も研究を進め、マイクロニードルパッチの成分浸透率をより高めていく」(権社長)
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