化粧石けんOEM(受託製造業)大手のマスター(本社=大阪府堺市)は、大型投資の直後に受注が低迷した2009年6月期から一転、前期は市場に吹いた石けんブームの風を捉えて増収増益を達成した。創業80周年だった2010年の勢いを活かし、今期も好調な製造・出荷状況を継続している。
100名を超える全スタッフのなかで最古参の奥中淑子専務取締役によると、同社の優位性は「普通素地と透明石けんの両方を製造している会社はおそらく(化粧品製造業では)当社だけではないか」という間口の広さであり、本来ならば「非効率」や「不採算」の原因となりがちな対応領域の広範さが本舗の信頼を得る要因に転化。現在の好調な業績を支えていると見てよさそうだ。
一方で、同社に舞い込む製造依頼の増加は末端市場の競争激化を反映したものであり、競合品との差異化をのぞむメーカーの注文内容を奥中専務は「もう30種類とか、多くのエキスを配合しようとする傾向が強まっている」と説明している。
これに対応する同社は、慣れない処方だった場合など「合理的に作るうえで現場はたいへんに苦労する。毎日が戦い」(同専務)という困難は一方で、「与えられた難題をクリアすると、その経験は(当社の)経営資産となって蓄積する」として前向きな理解力を示した。
そうした企業努力の反映の成果として、かつて全体に占める構成比が約30%だった受託製造売上げが上昇。現在は50%に高まった。
また、流行り廃りが少なくない国内市場の性質を踏まえ、同専務は「現在の石けんブームを一過性で終わらせたくない」という危惧を抱えている。そのため、末端に顔を出せない黒衣として「開発力を高めるしかない」と強い意欲を示した。
この記事は週刊粧業 掲載
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