GMS・量販店の化粧品販売、有力各店が有形無形の独自色を確立する時代へ

週刊粧業

カンタンに言うと

GMS・量販店の化粧品販売、有力各店が有形無形の独自色を確立する時代へ

 量販店各社が加盟している日本チェーンストア協会(通称=JCA、事務局=東京)による平成22年度(2010年4月~2011年3月期)「チェーンストア販売統計」によると、同期間における化粧品売上高(医薬品を含む)は4031億3596万円で対前年比98.6%となっている。個人消費の低迷に抗えず実績割れが避けられなかった一方で、落ち込みの幅は「衣料品」(95.6%)や「水産品」(94.1%)に比べると少なかった点からは、不況に強いとされる化粧品の特性が垣間見えたようでもある。また、同期間の推移を四半期毎に追うと、化粧品の前年同期比は第1四半期(97.0%)から第4四半期(102.5%)にかけて緩やかな上昇を継続していることから、こと当期に関していうと量販店における化粧品は“復権”の動きを見せた格好だった。

利益確保と鮮度維持の狭間で売場づくりに積極投資

 本特集で取材協力を得た有力4社・4店舗の社内的なポジションを検証してみると、各社の業容や展開商圏に違いこそあっても、おそらくは社長室に掲示しているはずの店舗マップのなかで重要な役割を担ったキー拠点であるはずとの仮設を立てることができる。

 理由として、ビルド&スクラップを経営方針の基礎にしてきた量販店業態にとり、改装や売場再構築のためコストを投下する先は収益の担い手として期待がかかっていることの証左だといえる。

 顧客に支持されるためのより良い売場づくりに向け、検討や考察に費やす時間的コストも相まって、鮮度を疎かにしていない個別店舗は運営社本体の調子を計る指標のようでもある。

重要商圏のキー店舗を今春の改装で活性化

 「テコ入れ」という表現が最も相応しいといえそうなのがイズミヤ長岡店(京都・長岡京市)。京都と大阪の各中心部から一定の距離間で離れた当地は真っ向でぶつかる競合店が無く、衣食住を一貫して揃えるイズミヤは商圏の生活者に支持されてきた背景があり、今春に巨額のコストを投じて大規模な改装を断行して全館を刷新した。

 このうち、化粧品が並ぶH&BC売場は「回遊性と可視感の向上によるカジュアル訴求の売場づくり」(商品部)を整え、半年間を経て早くも「良い流れにあると捉えていい」と自己判断を下せる商況にあるほか、同店のモデルを「各店舗にフィットさせていくかが課題」(同)だとして拡がりをつける方針も明らかにしている。

話題の韓流コスメで差異化とアイキャッチ

 また、イオンリテールのイオン津田沼店(千葉・習志野市)は芸能ジャンルで再燃して著しい韓流ブームに狙いを澄まし、今春から独自編集により韓国コスメを集積した「The FACESHOP」の1号店を開店して社内外の関心を集めている。

 その後、「The FACESHOP」の出店を加速するというH&BC本部の方針からは計画に添った売上げが取れているという推計が成り立つほか、商品力に加え販売員を配した体制で化粧品売場の中心的存在へ育成する構えを見せている。

新しさ満載の郊外店が他社の風土入れ顧客育成

 さらに、ユニーは昨秋に初年度売上目標で150億円と掲げた新巨艦店「ヒルズウォーク徳重ガーデンズ」を準地元の名古屋市に開店し、外部企業が運営する化粧品専門店「パルファンガーデン」を300㎡超の場所へ誘致して顧客の育成を進めている。

 開店から間もなく丸1年間が経つ現在だが、新規出店から早々に売上が伸びるほど甘くないのが化粧品ビジネスであることから、パルファンガーデンの店長は「顧客づくりにまい進の時」といった考えで2年目以降に真価を見せる決意を示していた。

発祥地に根づいた巨艦は4年目で安定飛行が定着

 このほか、イズミが創業の地で2008年に開店した巨艦店「ゆめタウン広島」は、既に“新顔”のヴェールが消えて地域にしっかりと馴染んだ印象が強まり、カウンセリング化粧品売場も顧客をつかんでさらなる前進をめざしている。

 前出ユニーの「パルファンガーデン」が、目と鼻の先のマツモトキヨシと向き合って競い合いの構図を醸していることと同様、イズミのカウンセリング売場も本体が編集する単品売場と背中を合わせる商環境で来店客の評価を競い合っている側面がある。

 自社の商品部が主導で編集するGMSサイドのもと売場と、メーカーが優れた美容部員を派遣して収支を睨むカウンセリング売場とによるバランス感覚は、レイアウト上の位置取りや導線のめぐらせ方で各社が相当に腐心するテーマとなっているといえる。

 本特集の量販店取材を通じて実感したことは、百貨店や専門店のほかドラッグストアとは大きく異なるGMSの特性を受け入れ、自社編集売場とメーカーの衣を借りたカウンリングショップが織りなす“究極の融合”を見出した企業が、今後にかけて抜きんで出た存在になるといえそうだ。

※【週刊粧業】GMSの化粧品販売最前線コチラ

週刊粧業web版紹介.jpg

ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > GMS・量販店の化粧品販売、有力各店が有形無形の独自色を確立する時代へ

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop