北原邦子社長に聞く、日本化粧品の採用基準

粧業日報 2016年10月24日号 4ページ

カンタンに言うと

北原邦子社長に聞く、日本化粧品の採用基準
重視するのは試験結果より人柄、
社員のために行儀作法まで徹底指導

 「北原美顔」で知られる日本化粧品は、今年で創業115周年を迎えた老舗企業である。社員は厳しい指導を受けながら自分のスキルと肌を磨き、質の高いサービスを提供することで高い評価を得てきた。

 幅広い年齢の女性が活躍しており、北原邦子社長の言葉からは、代々受け継がれてきたDNAを礎に皆が一丸となって北原美顔を盛り上げていこうとする意気込みが伝わってくる。

 ――どのような人材を求めていますか。

 北原 当社では年齢を問わず、広く募集をかける。働く女性をバックアップしているので、母子家庭の女性には優先的に入社していただき、PTAがあれば快く出席してもらう。

 採用にあたり重視しているのはやはり人柄だ。波長の合う人同士で窮屈な思いをせずに仕事をしていきたい。自由な意見交換を臆せずできる会社を目指しているので、明るく臨機応変に対応できる人材がのぞましい。

 採用時には面接と簡単な筆記試験をする。試験では点数よりも日本語をちゃんと理解できるか、指示通りの答えが出ているかを重視する。面接ではどのような気持ちで応募したのか、人の目をみてにこやかに応対できるかを確認する。就職は嫁入りと一緒で縁がないとなかなか続かないもの。まじめで、誠実に仕事をしてくれる、健康な人がよい。

 美顔部は中途採用が多いが、エステティシャンの経験は問わない。北原では1から10まで独自のやり方を身につけてもらうからだ。それを自らの肌でも実践するので、どんどんきれいになる。肌状態がよくない人なら自分の肌がきれいになった経験からお客様に説得力のあるアドバイスができそうだ。キメが細かい人の肌はやさしく、皮脂が多い人は攻めるなど、加減が身につくと一人前。肌は千人千色で、お客様の肌が教科書である。

 製造部では仕事柄、液体など重いものを扱うことがあるので、採用時に運べる体力があるかをチェックする。製造は北原の命だ。ここでは充填の機械を分解洗浄してから次の製品づくりに着手するという昔ながらのつくり方をしている。例えば、下地クリームは完成までに4日を要する。丁寧に作り込むことで赤ちゃんも使える製品になる。

 ――指導で心がけていることは何ですか。 

 北原 私は江戸っ子なので多少きつく言ってしまうことがあるが、「5秒で忘れてね」と言って引きずらせない。その人が憎いからではなく、よかれと思って一生懸命指導しているので、3年も経つと「あうん」の呼吸で機転を利かせられるようになる。一人で二役も三役もこなしてくれるので少人数でもやっていけるのだと思う。

 やはり社員あっての会社である。よって産休中の人もいるし、親の介護が必要な場合は本人が望むパターンで仕事をしてもらう。以前務めていた人から「復帰したい」と声がかかることもあり、即戦力として活躍してもらっている。

 このように、縁あった人に気持ちよく仕事をしてもらうため、経営者として心を砕いている。会社にとって社員は宝物なのだ。

 ――代々、引き継がれた思想があるのですね。

 北原 創始者である北原十三男は女性の地位向上のために日本初の美容学校をつくった。「どんなに貧しくても教育だけは惜しむな」というのが北原家の家訓だ。身につけた教養は荷物のように置き忘れることはない。また、目先の利益に追われることなく、真摯に仕事を続けていれば後から利益はついてくる。まじめな仕事を一対一でさせていただくのが北原の信条である。北原に携わってよかったと思えるよう、一生懸命指導をするので、指導したことを素直に受け止めてほしい。

 当社では社員に行儀作法や言葉づかいなどを指導する機会が多い。これは社員にとってもプラスになるので、時には質の高いサービスを提供するお店に社員を連れていき、従業員の動きなどを見て学んでもらっている。

 細かいことでは、会社に飾ってある花の水やりの方法まで教える。私も先代社長だった母からタオルの干し方までうるさく教えられた。教えてもらえるうちが花である。私も後で社員から「教えてもらってよかった」と思う日がくると信じて指導している。

 このような指導の成果もあり、どなた様にも敬意を払う立ち振る舞いをお取引先様から褒めていただくことが多い。

 当社ではお礼を申し上げる時に「ありがとうございました」と過去形にはしない。「ありがとうございます。またのご来社をお待ちしております」と、永遠に続くようなご挨拶を心がけている。

 ――最後に今後の展望をおきかせ下さい。

 北原 私が2年前に社長に就任してからホームページをリニューアルし、会社の歴史、沿革などを詳しく掲載したのでご覧いただく応募者もいるだろう。老舗企業の底力を感じとったのか、ここで腰を据えて勉強させてもらいたいと、多くの応募者が集まってくる。

 これからも一人でも多くの方に赤ちゃんでも安心して使える化粧品を知ってもらい、提供していきたいと願っている。

 来春には石鹸のリニューアルや、それに付随したシャンプーを導入する計画だ。北原の次世代を担う人材も育っているので、創業150周年は安心して迎えられそうである。
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