2010年、名古屋で生物多様性条約の締約国会議(COP10)が開催されました。COPといえば気候変動条約の締約国会議が有名ですが、ともに1992年の地球環境サミット(リオ・サミット)で提起された重要な条約に基づく会議体です。生物多様性というと絶滅危惧種や熱帯林の保護などを思い浮かべ、経済取引との関連性が乏しいように感じられる方もいらっしゃるかも知れません。そこで、今回はCOP10から予見される粧業への影響、そして今後何をすべきかについて考えみます。
私たちは生物多様性が基礎をなす生態系から様々な恵みを受けています(図表1)。その中でも供給サービスは、原材料の安定調達を図る上で重要です。生物の遺伝資源を利用するにあたって、COP10で採択された名古屋議定書において規制的な枠組みを導入することが明示されました(図表2)。
これまでは、先進国の企業関係者が途上国を訪れて、現地の方々から聞き出した情報を基に様々な生物資源を自由(無償)に用い、その知恵を活かして開発された新製品から企業は多くの利益を得ることができました。しかしそうした生物資源や先住民の知恵を基にして得た利益について、その一部を途上国に配分する必要性が公平性の観点から考慮されるようになってきたのです。
今後は、まず名古屋議定書にしたがって国際的な利益配分の仕組みが創設されることが検討され、国際的な仕組みを受けて具体的な国内の関連規制が整備される日もそう遠い日ではないと考えられます。こうした結果、例えば植物エキスを原材料に用いている場合など、調達競争が激しくなることによって、その必要量が十分に調達できなかったり、あるいは調達価格が高騰したり、さらには利益配分額を確定するための手続きに多大な時間を要するといった悪影響を及ぼすことも懸念されます。
田中計士
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/
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