日本の化粧品市場の洗練度は世界でも群を抜いています。日本人女性の中には、スキンケアの仕方や化粧品に関する美容知識が豊富で、数多くの商品を試し、自分にあったものを選ぶことが出来る人は少なくありません。
しかし中国では、美容関係者や美意識の高い富裕層等のごく一部の人を除けば、美容に詳しいとは言えない人の方が多いのが実情です。日本人女性とのレベルの差は、まだ相当に開きがあると実感しています。それゆえ中国で化粧品を宣伝広告するにはターゲットのレベルに合わせた「分かりやすさ」が重要なポイントとなるのです。
これについて一つ具体的な事例をご紹介しましょう。先月、北京にてグループインタビューを実施しました。対象商品は、フルーツ酸が配合された角質ケア用の洗顔石鹸で、日本では1個1500円で売られている商品です。インタビュー対象者は、20代後半から30代後半までの仕事を持つ女性で、家庭年収が10万~20万元、そのうち一カ月に自分が自由に使える金額が3000~5000元という条件に該当する女性達に集まってもらいました。
インタビューは、まず肌の構造やターンオーバーの仕組みなど美容についての知識の確認から始めました。角質の機能を知っているかどうか尋ねると、ほぼ全員が「知っている」と答えましたが反応はあまり良くありません。「聞いたことはあるけれど、詳しくは知らない」という回答が返ってきました。
しかし、「この石鹸で洗うと肌が白くツルツルになる」という話に進むと、「私は日焼けしやすく肌が年中黒い」とか「よくニキビが出来るのでツルツルの肌は憧れ」など彼女達は一気に自分の肌の話をし始めました。彼女達の話は、肌の悩みや理想の肌など様々でしたが、特徴的だったのが「きれいな肌」や「若い肌」といった抽象的な表現が多かったことです。さらに突きつめていくと、彼女達は自分の肌に悩みを抱えてはいるものの具体的原因のところまで自己分析できておらずイメージの段階でとまっている状態にあることが分かりました。そのため、「白い」「ツルツル」といったイメージを膨らませるような分かりやすい訴求が効果的だったのです。
沖野真紀
中国女性市場専門調査会社 (株)ブルームス代表取締役
定性調査に特化したインサイトマーケティングを得意とする。また、日本とアジアのメディアで美容通としても活躍中。その知見と現地調査でアジア女性の美容ニーズの分析に努めている。
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