今回は、直近の有価証券報告書を用いて業界各社の財務分析を簡単に行ってみたいと思います。財務分析と一言でいっても、企業の収益の水準を分析する「収益性分析」や、売上高や各段階損益の期間比較を行って企業の成長性を分析する「成長性分析」等、様々な分析方法がありますが、その中でも「安全性分析」を取り上げたいと思います。

 ご承知の通り、いくら収益が上がっていても、様々な債務の支払ができないことには事業を継続できません。支払が滞り、手形や小切手の支払で二度の不渡りを出すと、全ての銀行取引が停止され、企業の活動は事実上ストップしてしまいます。「安全性分析」では、主に会社の貸借対照表を用いて、各社の債務の支払能力を数値化し、資金繰りが安定しているか、言い換えれば会社の財政状態の安全性が高いかを分析します。

 今回は、「安全性分析」での代表的な指標である「当座比率」「長期固定適合率」を用いて、業界各社(資生堂、コーセー、ポーラ・オルビスHD、ユニ・チャーム、小林製薬)の状況を見てみました。

 まず、「当座比率」は当座資産を流動負債で割りかえして算定します。当座資産とは、必要に応じてすぐに現金化できる、つまり支払に回すことができる資産をいい、現金や預金、比較的短期に回収できる営業債権や有価証券等を含めるケースが一般的です。一方、流動負債は、期末日後1年以内に支払・決済される負債をいい、一般に「当座比率」は100%以上が望ましいとされています。

 これを、話を分かりやすくするために家計に当てはめて考えてみましょう。「当座比率」が100%未満ということは、貯金が100しかないのにも関わらず、借金が100を超えてしまっているということです。つまり、借入の返済を貯金の取崩だけで賄いきれない状態であり、資金的にはあまり望ましい状態ではないでしょう。

 この点、以下の〈別表1〉をご覧頂くとお分かりのように、100%を上回っている会社がほとんどです。主要各社は支払能力を十分に兼ね備えていると考えられます。

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田中計士

新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー

2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/

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