化粧品のリテラシー
2013.09.30
はじめに
化粧品は、一体何からできているの? と聞かれ、1アイテム当たりおよそ30品目以上の処方構成の中で作られているので......しかし、一番多く使われている原料は水であると思う。まさに水商売である。その次は、処方構成からいってさまざまな油脂がくるのだろう。
では、その原料はどこで誰がつくったの? と聞かれ、天然由来や合成由来だけでは回答が寂しい。もっと知りたい、きっと先人たちの歴史があるはずである。日本で命名された化粧品原料もある。そこで今回は2人の日本人を紹介しよう。
辻本満丸1)
明治後半の農商務省所管の東京工業試験所(現在の産業技術総合研究所の前身)の技師であった、辻本満丸博士の話である。辻本はある魚油会社からの依頼により、焼津近海で捕獲されたクロコザメなどの分析を行い、さらに興味をもち小田原産の同種のサメ肝油を手に入れ分析を行った。
その結果、肝油はケン化が低く多量の不ケン化(アルカリを加えても石鹸にならない物質)を含んでいること、しかも不ケン化物はヨウ素価(二重結合をもっている指標)が極めて高いことなど、従来の魚油と異なる特徴があることを知った。ちなみにサメには浮袋(鰾)がないので、深海で浮力を得るために肝臓に蓄えた脂質を利用している。肝臓は極めて大きく全体重の25%ほどを占め、90%が油により構成されている(図1)。
そこで、不ケン化物から分離・精製したところ、ある種の二重結合の多い炭化水素化合物らしい物質が存在することを発見した。1906年(明治39年)に工業化学雑誌1)に発表したことが発見のきっかけとなった。構造が炭素30水素50であることを確認し、この新規炭化水素が学名ツノザメ科(スクワリデー)のサメ(図2)に多いことから、1916年「スクワレン(当初スクァレンと表記)」と命名する。辻本が若干39歳の時である。
翌年の1917年、英国のチャップマンは、ポルトガル産のツノザメ科(英国の科名、スピナシデー)でサメ肝油を確認しスピナセンと命名した。しかしその翌年1918年、彼はなぜかスクワレンと同一物ではないことを主張する。その時辻本は、「チャップマン氏の研究が全然独立に行はわれたることを信ずると共に本炭化水素の発見及び命名の先取権は著者の報文にあること明白なるべし」(原文)と述べ、スクワレン命名権を主張し反論した。さらに、辻本は1923年にスクワレンの水素付加物を合成し、分子式で炭素30水素62であることを確認し「スクワラン」と命名した。
当初スクワレンやスクワランの利用目的が、実は化粧品原料ではなかった。凝固点はきわめて低く-70℃近いし、沸点は常圧で約300℃におよぶ。このような幅広い液状油が当時あまりなかった。よって第二次世界大戦中に、戦車や戦闘機の潤滑油として軍需目的でスクワランは利用されていたのである。
辻本は、サメ肝油以外にも、海産動物油、淡水産魚油、昆虫油や植物油など広い範囲にわたって、その性状、成分を明らかにしている。化粧品に使われる原料では、香川県小豆島のオリーブオイルにもスクワランが存在することを1936年に見出していたし(植物性スクワラン)、プリスタン、バチルアルコールやキミルアルコールもそうである。研究や実験の内容が几帳面に記録されて整理された手帳のナンバーに、博士の研究に注いだ情熱が感じられる(図3)。
1955年東京生まれ 工学博士 大分大学大学院工学研究科卒業、化粧品会社勤務を経て日油㈱を2014年退職。 日本化粧品技術者会東京支部常議員、日本油化学会関東支部副支部長、日中化粧品国際交流協会専門家委員、東京農業大学客員教授。 日油筑波研究所でグループリーダーとしてリン脂質ポリマーの評価研究を実施。 日本油化学会エディター賞受賞。経済産業省 特許出願技術動向調査委員を歴任。 主な著書に 「Nanotechnology for Producing Novel Cosmetics in Japan」((株)シーエムシー出版) 「Formulas,Ingredients and Production of Cosmetics」(Springer-Veriag GmbH) 他多数
(株)通販総研 化粧品専門コンサルタント
(株)フォー・レディー代表取締役
株式会社トレンドExpress 「中国トレンドExpress」編集長
琉球ボーテ(株) 代表取締役
女性潮流研究所 所長 / 商品企画コンサルタント
美容専門PR・販促支援会社 (株)DSプロモーション 代表取締役
TPCマーケティングリサーチ(株)マーケティングマネージャー
(株)矢野経済研究所主席研究員
(株)矢野経済研究所主席研究員
株式会社アイスタイル 取締役 CQO / コーポレート領域管掌
株式会社ES-ROOTS代表取締役社長、一般社団法人エステティックグランプリ元理事長
(株)ヴィーナスプロジェクト代表取締役社長
中国女性市場専門調査会社 (株)ブルームス代表取締役
中国女性市場専門調査会社 (株)ブルームス代表取締役
フルブルーム国際商標事務所 所長弁理士
週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)
新日本有限責任監査法人 公認会計士から見た化粧品・トイレタリー業界
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
(株)船井総合研究所 東京経営支援本部 部長 グループマネージャー
LAFASO JAPAN 代表取締役社長
吉田法務事務所代表、日本薬事法務学会理事長
産業能率大学総合研究所主席研究員
(株)ネオマーケティング ビューティ&ライフチーム マネージャー
(株)ホットリンク ソーシャルメディア事業本部 コンサルティング部
マーケティング/商品企画/プロモーション担当の企画業務を支援する情報が満載。Power PointのPDF版では記事フローチャートで情報整理しご提供。
毎年、週刊粧業が行う調査結果レポート総計をCD-Romにて販売。非常に利用価値が高く、化粧品業界の企業戦略には欠かせない知的コンテンツ。>
有料(1コンテンツ CD-Rom)
50,000円(税込、送料込)~
※Windows版のみ
ネットリサーチ大手、クロス・マーケティングが最新のトレンドをまとめた一般向けには公表していない自主調査レポートを無料でダウンロードできます。
全国のドラッグストア、スーパーマーケットの
ID-POSデータから市場トレンドを気軽にチェック。個数ランキング上位10商品の市場シェア(個数)とリピート率をご覧いただけます。