第21回 男性だけではなく女性にも

【C&T2015年1月号10面にて掲載】

はじめに

 離婚カウンセラーの岡野あつこ女史によれば、「今は、女性が男性を育てる時代」らしい。男性から幸せにしてもらおうという時代は、とっくに終わり、女性が「貴方を幸せにしてあげる」と言える女性作りを推奨している、つまり"KY(可愛く、よいしょ)の法則で5S(スゴイ!さすが!ステキ!最高!世界一!)"を使えば、家庭の経営は完全に妻が握るという。

 今までだって女性は、デフレなんて関係なく消費を続けてきた。そうでなければ、銀座の景観を変えるほど増えた海外ブランドの大型店が、10年以上持ちこたえられるわけがない。「1度覚えた消費のうまみを忘れられない」女性の物欲は健在だ。

 ところが、その女性に引き換え、男性は劣化の一途をたどっている。バブル期のアッシー君(送り迎えする男性)、メッシー君(食事をおごる男性)なんて役割に甘んじて以降、輝きを増す女性との格差は広がるばかり。女性をうまく口説くのも苦手、いや反対に、身奇麗にして好かれたい美魔女ならぬ『美魔男』まで登場したらしい。だから男女の距離を縮めるはずの車だって売れなくなる。今や、家庭や消費では女性こそ主役である。

 しかしである。社会進出の側面では主役たり得ているのだろうか?「STAP細胞はあります」。STAP騒動の真偽は別として、いささかうわずった声は今も記憶に強く刻まれている。このヒロインは、ピンク色と白衣の割烹着を好む研究者だったことがメディアで注目を集めた(図1)。

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(図1 理化学研究所 小保方晴子ユニットリーダー)

 成果とは別に、社会的な影響をもつことの少ないと思われる若い"女性"であることが注目を集めた。実際に、図2に示すように日本の雇用労働者の賃金は男性10に対して女性6~7程度の格差がある。その差は、まだまだ世の中が男社会であることを意味しているのかもしれない。

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(図2 年齢階層別 男女の平均給与)

M字分布

 2014年度の年次経済財政報告(経済財政白書)では、経済成長の制約要因となっている労働力人口の減少について、女性と高齢者の就労を促すことが重要と指摘し、育児をしながら働ける環境を整備すれば、女性の労働力を約100万人増やすことができるとの試算を示した。白書は、日本の労働力人口が13年の6577万人から30年には5683万人まで急減するとの予測に基づき、働き手の減少を緩和するために「子育て世代」の女性に注目している。

 実際に男性の労働力率を年齢別にグラフ化すると、一般的に諸外国では逆U字ないし台形分布が現れるのに対して、日本の女性のそれは男性と異なった傾向を示すことがある。「昇進意欲が低い」「すぐに仕事を辞める」という声が聞こえてくる中で、特徴的なものとして知られているのがM字分布である。これは、女性が結婚や出産を機に離職し、育児を終えた後に再び労働市場に戻るというライフコースをとる社会においては、30代で労働力率が低下するため、M字の谷が現れる(図3)。

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(図3 日本と先進国の年齢別労働力率)

 長時間労働や、仕事と家庭の両立が難しいことが、女性を尻込みさせている要因をなっており、子どもを持った段階で仕事か家庭かの二者択一を迫られ、退職する女性は今なお多い。一度職場を離れると好条件での再就職は難しい。これでは管理職候補となる女性の数は限られてしまう。同時に男性がもっと家庭で役割を果たせるようにすることも欠かせない。

 日本の男性が育児や家事にかける時間は、欧米に比べ短い。子育て対策次第で30代になると働く女性が減る現象も改善するといわれている。そこで政府が準備に入った新法は、女性の再就職支援のための助成金支給も打ち出した。女性登用で一定の基準を満たした企業を認定し、該当企業を税制や、地方自治体による助成事業で優遇する措置を盛る方向である。

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島田邦男

琉球ボーテ(株) 代表取締役

1955年東京生まれ 工学博士 大分大学大学院工学研究科卒業、化粧品会社勤務を経て日油㈱を2014年退職。 日本化粧品技術者会東京支部常議員、日本油化学会関東支部副支部長、日中化粧品国際交流協会専門家委員、東京農業大学客員教授。 日油筑波研究所でグループリーダーとしてリン脂質ポリマーの評価研究を実施。 日本油化学会エディター賞受賞。経済産業省 特許出願技術動向調査委員を歴任。 主な著書に 「Nanotechnology for Producing Novel Cosmetics in Japan」((株)シーエムシー出版) 「Formulas,Ingredients and Production of Cosmetics」(Springer-Veriag GmbH) 他多数

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