第31回 ワカルではなくワカラナイカナ

【C&T2017年7月号7面にて掲載】

はじめに

 今から1000年ほど前の平安時代、不倫のバイブルともいえる!?「和泉式部日記」、デキる女子の前向きブログのような清少納言の「枕草子」、元祖こじらせ女子の宮仕えをつづった「紫式部日記」など---。彼女たちは天皇に仕えていた女性として、京の都で貴族たちと華やかに暮らしていた。

 この時期に日本の風土や暮らしに合った文化が生まれた。漢字を基にしたカタカナの歴史はその前の奈良時代に遡り、たとえば「江」の一部を使ってカタカナの「エ」となり、自分の気持ちが自由に表せる文字として、貴族女性のあいだで広まった。

 カタカナは音を示すことを目的とする主に外来語に使用し、漢字のような表意文字ではない。つまりわからなくても使える、意味不明でも魅力があり、スキンケア、ヘアケア、メークアップの分野、つまり私たちの業界に氾濫している。今回はそんなカタカナを集めて、正しい知識をワカルためワカラナイカナの確認をしておこう。

ノンケミカル1)

 無添加化粧品には科学的根拠がなく、最近このキャッチフレーズも少なくなった。そこで目にするのがノンケミカル化粧品、ケミカルフリー化粧品。ケミカル=化学で、化学合成原料は肌に悪いといったイメージを逆手に取り、配合していない(ノン)化粧品を表現している。

 しかし、化粧品に配合している美白剤ビタミンC(アスコルビン酸リン酸Mg)はブドウ糖からの合成だし、保湿剤BG(ブチレングリコール)は化学合成品である。特定の原料のみを指してノンケミカルといい安全性を訴求するのであれば不適切である。

オーガニック1)

 医薬品医療機器等法(旧薬事法)には、自然化粧品とオーガニック化粧品の分類・定義はない。化学肥料や農薬を使用しないで栽培した植物を指す有機栽培のことだ。化粧品原料の場合、食事の野菜と異なりそのまま使用するのではなく、抽出・加工・精製の工程を経る。よって、欧米を中心に民間のオーガニック認証機関の許諾(図1)を受けた、原料や化粧品を呼称する場合が多い。



 しかしさらに大事なことは、イメージだけで選択するのではなく、表示成分をみて自分の肌への適合性を確認することである。

ノンコメドジェニック1)

 一部の化粧品の表示にアレルギーテスト済と共に、ノンコメドジェニックという表示がある。コメドとはニキビのことだ。

 その形成に影響する不飽和脂肪酸(この油は酸化を受けてニキビの炎症を悪化させる可能性がある)、やニキビ形成にかかわりのあるアクネ菌による資化(菌の栄養となり分解)性が懸念される成分を使用せず、よりニキビができにくいように処方化された化粧品と原料を指す。勿論、ニキビができないというわけではないし、治るわけでもない。

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島田邦男

琉球ボーテ(株) 代表取締役

1955年東京生まれ 工学博士 大分大学大学院工学研究科卒業、化粧品会社勤務を経て日油㈱を2014年退職。 日本化粧品技術者会東京支部常議員、日本油化学会関東支部副支部長、日中化粧品国際交流協会専門家委員、東京農業大学客員教授。 日油筑波研究所でグループリーダーとしてリン脂質ポリマーの評価研究を実施。 日本油化学会エディター賞受賞。経済産業省 特許出願技術動向調査委員を歴任。 主な著書に 「Nanotechnology for Producing Novel Cosmetics in Japan」((株)シーエムシー出版) 「Formulas,Ingredients and Production of Cosmetics」(Springer-Veriag GmbH) 他多数

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