第41回 『しないこと』を決める

【週刊粧業2016年10月31日号6面にて掲載】

 売上アップの為の施策や商品開発のアイディアを考えるとき広い視野で物事を考えることは大切ですが、考える範囲があまりにも広すぎるとアイディアの発想や行動の弊害になることもあります。そこで、『しないこと』を決めることで、限られた条件の中から出来ることを考えだし、実行に移すことに役立てることができます。

 例えば、キャンペーンDMの施策一つをとっても、売上げを上げることだけを目的にすると、多くは値引きをして、購入のハードルを下げることで反応率、売上げを上げようと考えます。しかし、『値引きをしない』というルールを作ることで、値引き以外の方法を使っていかにすれば反応を上げることができるかを考えるようになります。

 A社には、お客様に送るコミュニケーションツールの制作をする際、『他社の真似をしない』というルールがあります。そのため、スタッフは常にお客様に伝わる、喜ばれるツール制作を心がけており、他社にはないユニークなツールにてお客様とのコミュニケーションを行っております。通販事業は、比較的、他社情報が手に入りやすく、そのことが、自社独自の新しい発想を生み出す弊害になることもあります。

 A社のように『他社の真似をしない』と予めルールを作ることで、日々の生活の中からアイディアのヒントを見つけるアンテナを立てる習慣ができ、結果、他社にはないユニークなツール作りを可能にしています。

 B社には、『むやみに商品を増やさない』というルールがあります。売上げが伸び悩むと商品を増やせば売り上アップに繋がると考えがちです。しかし、単品リピート型通販事業においては必ずしもそうとは限りません。経営資源を分散することで事業成長の妨げになることもあります。そこで、B社は通販事業立ち上げ当初から、集客の為の広告予算や労力を1商品に絞ることで、事業を軌道に乗せることができました。

 また、C社には、『提案された広告をむやみに実施しない』という考えがあります。これは、自社なりの判断基準を持たずに、「○○という媒体の反応が良い」という話だけを鵜呑みにした結果、自社の商品と相性がよくないような広告や、現状にはそぐわない広告予算を投じた苦い経験があるためです。自社なりの判断基準を持ち、実施の有無を決定していれば大きな失敗を避けることができたでしょう。

 このように、『○○をしない』ということを具体的に決めることは、決して考えを狭めるのではなく、発想や行動の枠を広げることに繋がるのです。もし、最近画一的な考えが多くなったと感じていたら、自社なりの『しないこと』を決めてみてはいかがでしょうか?
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船生千紗子

(株)通販総研 化粧品専門コンサルタント

通販に特化した広告代理店を経て、株式会社通販総研に入社。現在、化粧品通販新規参入支援、化粧品通販企業向けに新規顧客獲得、リピート顧客育成による売上アップ支援を行っています。クライアントの強みを伸ばし、着実な成長を促すことをモットーにしています。

https://www.tsuhan-soken.com/

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