第30回 女性用育毛剤市場はこの先も拡大?

【週刊粧業2017年2月13日号10面にて掲載】

 ヘアケア市場は昔から大きなマーケットだが、中でも最近、特に女性用育毛剤の伸びが目立ってきた。

 前にも紹介したが、あるメーカーが50~60代の女性を対象に、自分自身の外見や女友達の外見に関する意識調査をした結果、「女友達の外見や見た目でチェックしている箇所は?」という質問で最も多かった回答は「服装」、2位が「体型」だった。そして、4位の「化粧・スキンケア」を抑えて3位にランクインしたのが「髪の毛(白髪・ボリュームダウン、ヘアスタイルなど)」であった。

 この意識調査の結果からわかるのは、髪の毛の問題は老化を気にする女性たちの中で大きな悩みになっているということだと思う。中高年の女性たちは今、「老けて見られるのは髪型のせいではないか」と気にしているし、それをなんとかしたいと思っている。

 老けを感じさせないようにするためには、ふんわりとしたボリュームのあるヘアスタイルを維持することが必要だ。ならばそもそも髪の毛の量を増やさなければならないと考える人たちが育毛剤を手に取り、薄毛対策を始めたということだと思う。顔のシミはメイクで隠せるし、白髪は染めれば誤魔化せるが、髪のボリュームはそうはいかない。そのため育毛剤は悩みの根本的な解決を可能にする商品だ。


 メーカー側もこれまでスポットライトが当たっていなかった女性用育毛剤市場に、様々な企業が参入してきている。女性たち自身の意識の変化も現れてきている。女性用育毛剤はCM等でも多く宣伝されるようになり、いまや彼女たちは堂々と商品を手に取るようになった。

 昔の人のように「恥ずかしい」という気持ちを抱くことはあまりなく、悩みは正々堂々と解決したいと考えるようになってきていると思う。

 これは、中高年になっても働く女性が増加し、外に出る機会が増えたことと無関係ではない。50~60代になっても若くきれいでいたいと願う女性が増加したことが市場拡大に貢献しているのではないか。

 実際に人気のある数社の女性用育毛剤を使ってみたところ、いずれの商品も数日間で劇的に髪の毛が生えてくるということはなかった。けれども、確実に抜け毛が減った商品はあったので、使い続ければ現状のボリュームをキープできるかもしれないという期待感が高まった。なにより、女性用育毛剤が登場し始めた頃と比べると、効果は格段にアップしていると実感させられた。

 このように、最近の女性用育毛剤は、「抜け毛が増加して頭皮が透けて見えてしまうのではないか」という不安を解消してくれる商品になっている。つまり女性用育毛剤は、自分の老いを少しでも目立たなくしたいと考える中高年女性に「安心感」を与える「究極のアンチエイジングアイテム」なのかもしれない。

 さらに最近は、若い女性の間でも育毛剤を使う人が増えてきていると聞く。商品開発側からも、若いうちから薄毛・抜け毛対策をしていたほうが効果があるのではないかということがアピールされており、この購買層についてもさらなる増加が見込めるのではないか。

 女性用育毛剤は、元気な中高年女性が増え、彼女たちが世の中で活躍すればするほど売れる商材ということになるかもしれない。

 どこまで拡大するかという規模の予測はできないが、女性たちが若々しさを維持したいと望み続けるかぎり、女性用育毛剤市場が小さくなることはないのではないか、という気がする。
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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