連載コラム

激変するコスメマーケット

2019.12.02

第45回 オーダーメイド化粧品はヒットするか

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

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【週刊粧業2019年2月4日号5面にて掲載】

 最近、美容業界の傾向の1つとして、『パーソナライズ化』が注目されている。「自分の肌悩みや髪悩みに合ったケアでより効果をあげたい」と考えるお客様にとって、「あなたに最適な」と訴求する『パーソナライズ化粧品』は魅力的である。

 現在は、多くの組み合わせタイプの中から、お客様の条件に合う最適な化粧品が選ばれて提供されるというパターンが多いようだが、この先さらに『パーソナライズ化』が進み、究極のパーソナライズ『オーダーメイド化粧品』の時代はくるのか、考えてみたい。

 ZOZOスーツのように、手軽に肌データを計測して、自分のためだけの化粧品を誂えてもらえるとしたら、それはもうお客様の夢である。しかし、実現のためにはまずお客様一人ひとりの肌を計測しなければならない。いちいち対面で計測するには時間がかかるため、どのように正しく計測するのかが重要になる。しかも女性の肌は季節や精神状態によってコンディションが変わりやすく、肌の変化に対応できなければオーダーメイドの意味がなくなる。トラブルやシーズン性へのきめ細かな対応が必要になってくるだろう。

 もちろん一般大衆向けである以上、身近で、手軽で、安くなければ買ってもらえない。これは相当にハードルが高い。しかもオーダーしてから、届くまで「○カ月待ち」のように時間がかかり過ぎると、他社の化粧品に目を向けてしまうだろう。

 できればどんな肌状態にも最適化されたオーダーメイド化粧品を、せめて中価格帯レベルで、手軽に便利にスピーディに届けてくれることを要望したい。こんなわがままなリクエストにどのように応えるのか。一部の限定された上得意客向けの化粧品であれば、高い費用をかけて実現することも不可能ではないと思うが、一般大衆向けとなるとそうはいかない。コストとスピードの問題がせめぎ合うことになるだろう。

 このように、『オーダーメイド化粧品』の実現には課題が山積みである。しかし一人ひとりのお客様が肌悩みや髪悩みを自覚し、自分に最適な商品を求め始めているのは現在の傾向なので、自分専用のスキンケアやヘアケアを持ちたいというニーズが止まることは無いだろう。そしてデータの計測や診断は、目覚ましい技術革新、AI化によって、遠くない将来に実現が可能になると考えられる。肌変化への対応も双方向Webなどの活用が考えられるだろう。

 つまりモノとして『パーソナライズ化した商品をオーダーメイド的』につくることはできるようになるだろう。しかしハード面の技術を磨くだけでは、ブランド価値をアピールできないのではないか?

 肌診断アドバイザーの信頼感や、きめ細かなサービス、励ましなどのコミュニケーションが充実するまでには、もう少し時間がかかりそうだ。「あなたの肌に合わせてケアする商品を提供します」という『パーソナライズ化』そのものが、他社と差別化できてブランド力を発揮することができればよいが、果たしてそれだけで既存のブランド以上の期待感を抱いてもらえるのだろうか?このあたりをよく考えておかないと、一時的なブームで終わってしまう。

 例えば、『オーダーメイド』の売り方に合った新しいアイテムの創出など、技術だけではなくマーケティング的にももっと革新的なイノベーションが起こせれば、さらに注目されてヒットする可能性もあるのではないか。

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プロフィール

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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