第6回 「揺るぎない消費者の支持」(コストコホールセール リチャード ギャランティ副社長)

【週刊粧業2019年12月9日号10面にて掲載】

 いまから20年近く前、シアトル郊外のイサクアにあるコストコ ホールセールの本部を訪れ、リチャード ギャランティ副社長にインタビューした。

 初めて会った当時、彼はまだ30代の若さだったが、既に副社長兼CFO(チーフ ファイナンシャル オフィサー)の要職にあった。驚くことに彼は現在でも全く同じ肩書で同社経営陣の中枢にいる。

 コストコは今年8月期決算では、営業収益が実に1500億ドル(16兆円)を超えている。世界の小売業でも5本の指に入る超巨大小売業に成長している。

 最初にお会いしたときも、とても気さくで、本部近くにある店舗を案内してくれた。まだ日本に進出する前で、いかに魅力ある売場づくりに苦心しているかを熱を込めて説明してくれた。

 本部は何の変哲もないビルで、彼の執務室も狭く、木造の机は脚が不揃いのため、いつもガタついていた。

 「すぐ隣の部屋にいる親父を紹介するよ」と言うので待っていると、何と創業者であるジェームス シネガル社長兼CEOが、スポーツシャツ姿で現れた。握手して挨拶したが、まさしく「シネガル親父」そのものの温かみのある雰囲気だった。彼は残念ながら先頃亡くなられたが、その人柄のよさに心を打たれた。

 ギャランティ副社長にはその後も何回か本部でインタビューし、その都度感銘を受けた。

 コストコの荒利益率は11%、経費率は10%で、年会費収入で利益を確保している。最近5年間でも、営業利益率はコンスタントに3%台の前半を維持し続けている。売上が巨大だけに営業利益は現在、5000億円をはるかに上回る。

 「まさに究極のディスカウントフォーマットと言えますね」

 「しかしミスター カトウ。店は何の飾りもないノンフリルのウェアハウスクラブですが、安いからといって無味乾燥であっては絶対にいけません。売場には常に季節感があり、エキサイティングな演出を施してお客さまに『コストコに行けば何か新しい発見がある』と感じて頂かねばなりません。この辺の努力が肝心なのです」

 確かにライバルのウォルマートも「サムズクラブ」というウェアハウスクラブを展開している。だが規模と収益性はコストコに遥かに及ばない。絶えずダイナミックに売場を変化させ、魅力ある売場づくりに挑んでいるコストコの強さがそこにある。

 コストコは現在、アメリカに544店を展開するほか、日本の26店を含めてグローバルで783店を展開している。1店平均の売上高は200億円を超える。

 最近5年間でも毎年20店以上をコンスタントに出店しており、この間閉店は1店もない。一見すると決して派手さはない企業だが、消費者の支持は揺るぎない。
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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