第18回 「調剤併設は経営の根幹」(スギホールディングス 杉浦広一会長)

【週刊粧業2020年4月6日号10面にて掲載】

 今から20年近く前、スギ薬局(現スギホールディングス)がまだ株式を公開する前だったが、杉浦広一社長(現会長)と妻の昭子副社長(現相談役)のお二人が上京され、都内の喫茶店でお会いした。当時の同社はまだ成長期に入ったばかりの時代だった。

 杉浦夫妻は私に、「加藤さん、人事制度や社員教育などに関して定評のある衣料品チェーンの『しまむら』の藤原秀次郎社長(現相談役)に是非お目にかかりたいのでご紹介いただけませんか」ということだった。当時、藤原社長とは親しくしていたこともあって早速連絡したところ面会が実現することになった。スギ薬局にとって人事教育制度の改革は急務だったのだ。

 スギ薬局の1号店は、岐阜薬科大学を卒業した広一氏が、同校の後輩である昭子さんと結婚して1976年12月、愛知県西尾市に調剤を併設して開業した小さな薬局である。

 スギ薬局は、どのような立地の店であっても原則として調剤を併設している。調剤併設は同社の代名詞であり、経営の根幹である。

 「地域における医療機関の一翼を担う『かかりつけ薬局』として、お客さまの健康の維持、病気の予防から介護、さらに終末期のケアまで一貫してサポートするトータルヘルスケアを推進するドラッグストアが当社がめざす方向です」

 最近では10店に1店の割合で、管理栄養士なども配置した、カウンセリング機能をさらに強化した「拠点店舗」の展開にも力を入れている。

 杉浦会長はいまも、週末は物件回りを欠かさない。このため彼はほとんど休みを取らない。元気なころの清水信次ライフコーポレーション会長と同じだ。

 上場以降の同社の成長は目覚ましく、2020年2月期には、売上高で5200億円、経常利益290億円をめざしている。店舗数も、東名阪中心に1200店を超えている。

 昭子さんが副社長として営業全般を担当していた当時、同社の朝礼を見学する機会があった。驚いたのは、時間の大部分が昭子副社長の話だったことである。広一社長は最後に少し話すだけだった。聞けば毎回同じようだという。「スギ薬局の小池百合子」と呼ばれていたのも頷けた。

 昭子さんは現在、「公益財団法人 杉浦記念財団」の理事長として、地域での包括的ヘルスケア活動に取り組んでいる個人や団体を支援するなど、八面六臂の活躍を続けている。

 なおココカラファインとの経営統合問題では、スギホールディングスも名乗りを上げたが、結局、マツモトキヨシホールディングスに最終決定した。

 スギホールディングスのある幹部は、「てっきり当社が指名されると思っていましたのでびっくりしました。しかし杉浦会長は、『これからも志を同じくするところと経営統合の話を前向きに進めていくことに変わりはない』と全社員に強調しました。逆にいま社内は燃えていますよ」と言う。
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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