連載コラム

激変するコスメマーケット

2020.06.08

第54回 ものづくりへの「こだわり」をどうするか!

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

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【週刊粧業2020年03月16日号5面にて掲載】

 「もっともっとこだわりのある商品を作らないと、なかなか他社との差別化は難しい」。

 いつも話している言葉だが、ではどこに「こだわり」を求めるかというと、なかなか明確に回答できないことがもどかしい。

 化粧品の商品開発は、原料の開発から考えるととても長い時間を要する。原料を探しつつ、お客様の悩みやニーズにどのように寄り添うか、両方を満足させなくてはならない。

 また、商品によっては使用感だけではなく、長い使用期間を経た後の変化も約束できるものでなくてはならない。そのため試用モニター期間を長く設定している会社もあれば、限定された人数だけでモニターをしている会社もあり、商品開発の考え方や仕組みは各社バラバラだ。

 そんな中、商品開発の仕組みがとても面白いと思える、他業種の開発システムが気になった。

 1社目は、家電業界で絶好調の「アイリスオーヤマ」、2社目は、儀礼的ギフトが不況の中で伸び続けている「カタログギフトのリンベル」である。

 アイリスオーヤマの商品開発は、TVでも特集されるほど有名で、開発会議の現場に見学者も受け入れている程だ。大学の階段教室のような会議室で、提案者がプレゼンテーションすると、いろいろな方面からの質問、突っ込み、ダメ出しが出て、担当者はサウンドバック状態になる。

 その後は没になるか、リターンマッチになるかなど、対応を迫られる。コンセプトは、徹底した「生活者目線」。シンプル、リーズナブル、いいね! が言えるかどうか。ともかく考え方が徹底していることが同社らしい。

 もう1社のリンベルの方は、全国の名産品を揃えた美味しいものカタログ「極みシリーズ」が大ヒットしているらしい。その商品開発会議は、バイヤーvs社長と審査員の「試食会バトル」。参加者が全会一致で「うまい!」と太鼓判を押さないと取り上げてもらえないとのこと。合格は2割程だという。

 両社に共通しているのは、参加者全員の「情報共有」「生活者・消費者目線」を徹底しているところである。

 両社の商品開発の方法を聞いて、正直なところつくづくうらやましいと思った。商材が異なるので一概には言えないが、化粧品でもこんな「徹底した開発会議」が実施できたらとても面白いと思う。

 化粧品の場合は開発途中で一般消費者に試用してもらうのは大変難しいが、工夫すれば何か方法があるはずだ。また、合理的な判断基準も設定できるはずだ。

 要は、自分のブランドに合った「こだわり」を設定して、社内のオープンな場で試用モニターや意見を出し合い、徹底して妥協のない議論をし、納得するまでやり続けるという姿勢を貫くことだと思う。

 化粧品会社は情報漏洩を恐れて各社ともあまり積極的ではないが、「ロイヤルユーザーを巻き込んでお客様にも商品開発に参加してもらう」ことも、とても有効な方法だと思う。

 けっして長い時間をかけるという意味ではなく、商品開発に関わるもの皆が「納得するまで」ということがポイントになると思う。

 そういうものづくりの情熱が、お客様に伝わった時に初めて「ファンができる」商品になるのではないか?

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プロフィール

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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