第11回 中国女性を鮮やかに彩るメークアイテム。

【週刊粧業2020年2月10日5面にて掲載】

 2019年中国の小売は、まさに「ライブコマース」の年だった。特にカリスマKOLである李佳琦がその存在感をいかんなく示していた。そんな彼の名を一躍有名にしたのが「口紅」だった。今回はそんな中国の口紅ニーズを見てみよう。

 中国トレンドExpressでは、19年に中国のメークアップに関するクチコミ調査を行った。

 口紅に関するクチコミのキーワードで注目したいのは、クチコミ件数4位となった「発色」だ。

 最近は日本でも「中国風メイク」が徐々に注目されているが、現代中国女性の中でもKOLの影響を受ける20代、30代女性は、日本よりも鮮やかな色合いの口紅を求める傾向にある。

 特に真っ赤な口紅をした女性の写真をSNS上では多く見ることができる。日本のような自然色、淡い色合いの口紅は比較的少ない。

 中国では「明るく鮮やかな色=活力」という伝統的な考え方があり、それが影響してか、ひと目で目を引くような強い色合いが好まれる。

 また、5位の「新商品」というワードもチェックしておきたい。

 口紅は押しなべて「チャレンジ購入」が多い。

 そもそもメークアップはスキンケアほど慎重に自身の肌に「合う・合わない」を検討する必要がなく、中でも口紅は、他のメークアイテムほどテクニックを必要としないことから、気軽にイメージチェンジをする商品と捉えられている。

 SNS上の投稿やKOLによるライブ配信などの情報に触れ、購入するケースも少なくない。以前、中国トレンドExpressで取材した30代女性は「いろいろ買って家に口紅が20本はある」と語っており、収集してしまう女性も少なくないようだ。

 さらに、11位に「新色」がランクインしていることを踏まえると、口紅は発売時点の過熱度合いで勝負が決まると言っていいかもしれない。

 ちなみに、トレンドViewerの19年の1年間で「買った」クチコミ件数をみると、アイライナーやアイシャドウが上位にランクインする中、4位に「CHICCA メスメリック リップスティック」が食い込んでいる。

 同ブランドを小紅書でブランド検索してみると、ほぼ口紅に関する内容だった。色合いとともに使用感、保湿感に関する投稿が多く見られる。

 ただ、周知の通り、同ブランドは19年7月に販売終了が発表され、20年秋までに徐々に姿を消すことになっている。

 この情報は中国国内でもSNSのみならず、ファッションや経済などのメディアにも報道され、驚きをもって受け止められた。

 「買った」クチコミデータでも、プレス発表があった7月上旬に同品のクチコミ件数が大きく上昇しているのが見て取れる(グラフ参照)。中国でもブランドのファンが少なくなかったことを物語って20おり、日本同様に「惜しまれつつ」姿を消すことになる。

 同ブランドに対する中国女性の反応は、日本のメークブランドにも十分な勝機を感じさせるものとなった。

 中国のメークアップ業界はすでに400億元を超える巨大市場へと成長しているが、日本ブランドにもまだまだチャンスが眠っているといえるだろう。
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森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

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