【週刊粧業2020年3月9日5面にて掲載】
春節も過ぎ、中国の発表するデータを見ている限りでは、患者数も落ち着き始めているかのように見えている中国の新型コロナウイルス。今回はその感染症が本格化した春節前後のクチコミの動きを見つつ、状況を分析した。今後の中国コスメ市場を考えてみよう。
中国SNSクチコミデータバンクであるトレンドViewerで、春節前後のデータを見ているとやはり大きな変化がみられる。
まず、日本商品に関するクチコミ件数全体を見ると、春節前では45万件から50数万件で推移していた。
しかし、1月22日の週、すなわち武漢封鎖が始まり新型コロナウイルス対策が本格化した週では、一気に32万件と、前週比で約18万件もの減少を見せた。これはやはり「日本の商品をつぶやいている余裕がない」という状況を示しているように思える。
その後さらに減少を続け、最新の2月5日から11日までの1週間では22万件余りと、1カ月前の半数以下にまで減少した。各地で移動が制限され、患者数の増加も続いており、多くの人たちが不安な生活を送っていた。
続いて、商品セグメントのクチコミ数の変化を見てみる。「買った」クチコミランキングから「スキンケア」「メイクアップ」「衛生用品」をピックアップする。
特に「メイクアップ」関しては、クチコミ件数は減少している。
「スキンケア」は22日週においては件数が増えたが、その後は全体件数とともに減少に転じた。特に翌29日週の減少幅は大きい。
それに比べて「マスク」を含む衛生用品に関しては、22日週にクチコミ数が前週比で36%も増加した。29日週に減少はしたものの、減少幅は「スキンケア」などに比べて小さい。
これだけ見ると、中国コスメ市場がこのまま落ち込むのではという不安にも駆られる。しかし、明るい兆しもある。
中国メディアの報道によると2月19日に浙江省杭州市の高級百貨店では短縮時間での営業を行ったが、わずか5時間の営業で1000万元(約1億5000万円余り)を売り上げた。売れたのは高級時計や高級化粧品。セレブの多い杭州市ではあるが、鬱屈していた消費力を爆発させた様相であった。
またSNS上には「報復性消費」と銘打った、「新型コロナウイルス騒動が落ち着いたら〇〇をする」といった今後に向けた内容の記事が転載されており、「化粧品を買いまくる」「東京にある最大のブランド旗艦店に行く」など、数多くの消費の夢が語られている。
新型コロナウイルス終息後、一気に消費に走るのではないか。そんな期待さえ感じさせてくれる。
ただ、中国側から思わぬ不安も伝えられている。それは日本の状況だ。
中国メディアは、日本商品を扱う貿易商のコメントとして「最大の商機である下半期に日本の人気化粧品が入荷できるか不安」と伝える。
その理由は「もし日本で新型コロナウイルス封じ込めに失敗し、(日本の)工場が操業停止にでもなったら……」というのである。
中国側の消費力が回復するタイミングで、日本ブランドが従来通りの商品供給を実現できるよう、日本側も早期終息をさせたいものである。