第23回 「現場力を高めるには」(ヤオコー 川野幸夫会長)

【週刊粧業2020年6月15日号14面にて掲載】

 ヤオコーは2020年3月期、単体で31期連続の増収増益をめざしている。これだけ長期間、安定した収益力を維持し続けているスーパーマーケットは同社以外にはない。その大きな原動力となっているのが、パート(同社ではパートナーと呼ぶ)を中心とする意欲的な業務改善努力である。

 ヤオコーでは10年以上前から、全社的な「TQC(トータル クオリティ コントロール)活動」に取り組んでおり、チームを組んで現場での業務改善活動を推進している。毎月1回開かれる事例発表会は「感動と笑顔の祭典」と呼ばれ、川野幸夫会長以下、ほとんどの役員が出席する。

 「皆さん非常に熱心に業務改善に取り組んでいることがよく分かり、思わず感動で涙が出てくるんです」と川野会長は言う。

 あまり知られてはいないが、ヤオコーでは経常利益率が4%以上を達成すると、パート、アルバイトを含めた全従業員に決算賞与を支給している。業績が好調なことから支給はほぼ毎年となっている。

 「駐車場を歩いていると整理のおじさんから『会長、ありがとうございました』とお礼を言われました。『皆さんが頑張ってくれたおかげですよ』と言いましたが、ありがたいことです」

 ヤオコーがめざしている「ライフスタイル アソートメント型スーパーマーケット」の原型となったのが、1998年に全面改装オープンした「狭山店」(埼玉県狭山市)である。4年前に開店した店を全く新しいコンセプトで作り替えたものである。

 「自分は何屋になるのか、根本的にこれまでの発想を転換し、様々な専門コーナーを新たに導入するなどで『食の専門店化』をめざすことにしました。この狭山店をスタートに、当社のめざすミールソリューション型スーパーマーケットづくりが進んだのです」

 その後、何年か置きに新しいプロトタイプストアが開設されて業態が進化し続けている。また既存店にもそのノウハウが順次水平展開されている。同社の既存店が比較的好調に推移している理由もここにある。

 今日のヤオコーの礎を築いたのは、川野会長の母、トモさんである。家族を説得してセルフサービスを導入したのもトモさんであり、チェーンストア展開の出発点となった「小川ショッピングセンター」(埼玉県小川町)の開設に向けて奔走してのも彼女だった。

 幸夫氏は、東大法学部を卒業して弁護士の道を志したが、お客さまのために身を粉にして働く母の姿を見て家業を継ぐことを決意した。その後同社は、幸夫氏のリーダーシップの下、日本を代表するスーパーマーケットに成長発展した。

 なおヤオコーは2020年3月期、売上高4480億円、営業利益183億円をめざしている。店舗数は、買収したディスカウント型スーパーマーケット「エイヴイ」12店を含めて178店となる計画だ。
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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