【週刊粧業2020年6月15日号6面にて掲載】
ビジネスを成功させるうえで大切なことに、「あり方」と「やり方」があります。「あり方」とは、どのようにお客様に想ってもらいたいのかというビジネスをする上での根底の考え方を指します。「やり方」は、ノウハウのことです。「あり方」が明確であるほど、「やり方」を手に入れると、競合に負けない企業へと成長していきます。
「やり方」であるノウハウは、他社がすぐに真似することができてしまうため、多くの企業が同じようなやり方をするようになれば、差別化されません。しかし、「あり方」は、企業の考え方であり、それが文化となるため真似しようがないためです。
化粧品通販会社A社は、『お客様が主語』という考えをもっています。お客様は、どう思うか? お客様は、嬉しいのか? というように、常にお客様の気持ちを考えることが文化として根付いています。例えば、お客様から、無地の梱包で送って欲しいとか、同梱物を入れないで欲しいという要望があれば、全て個別に応えます。
各要望に応えて個別対応をすることは、非効率であり、なかなかこのような取り組みを行うことはできないものです。しかし、お客様が主語という考えが根底にあるので、自社の効率を優先させるのではなく、このような対応は当たり前のように行われています。
島根県玉造温泉にある化粧品通販会社B社は、『商品を買って良かった、また買いたいな、誰かに紹介したいな』と想ってもらたいという考えを根底に、事業を行っています。その考えがさまざまな取り組みに表現され、多くのお客様から共感を得ています。
先日、その共感から、ある取り組みが実現されました。観光地である玉造温泉もコロナ禍で大変な影響を受けています。そのことを知ったある有名モデルの方からの提案で、一緒にインスタライブをやることになったのです。
この方は、過去に玉造温泉を訪問して、街とB社のことが大好きになり、お仕事としてではなく、インスタライブを通して、玉造温泉の窮状やB社の商品を紹介してくださいました。
なかなか、このようなことは、狙ってできることではありません。どうありたいかをベースに、誠実に取り組んで来たことが、このような形で実を結んだのでしょう。
フォロワーが多い方や芸能人の方に、インスタで紹介してもらうことはお金を出せばできることです。これは誰でも真似できることですが、好意から紹介をしてもらえるというのは、なかなか狙ってできるものではありません。
「あり方」は目に見えないので、他社の「やり方」ばかりに目が行きがちですが、「あり方」が明確で社内に根付いていると「やり方」の成果も大きくなります。是非、「あり方」を大切にしながら、「やり方」を検討していってください。