第24回 「国民の美と健康に奉仕」(コクミン 絹巻和美前会長)

【週刊粧業2020年6月22日号6面にて掲載】

 コクミンの1号店は、創業者である絹巻薫氏によって1935年(昭和10年)4月、大阪市住之江区粉浜に開業された「粉浜コクミン薬局」である。日本のドラッグストア業界にあって同社は、最も旧い歴史を持つ企業の一つである。

 流通ジャーナルでは、同社が創業50周年にあたる1985年にコクミンの特集号を企画し、私が当時会長だった絹巻薫氏にインタビューした。

 この中で同氏は、「創業当時は戦前で、薬剤師がお客さまの健康状態に合わせて薬を調合することができましたので非常に喜ばれました」と語っている。

 同社の企業理念は「国民の美と健康に奉仕する」であり、店名のコクミンもそこから由来する。薫氏は2009年10月、100歳の長寿を全うされて亡くなられた。

 薫氏の長男、絹巻和美氏が後を継ぎ、全国の主要ターミナル立地を中心に化粧品、調剤を主力とする「コンミンドラッグ」をチェーン展開していった。

 「父の時代から引き続き、JRとは親密な関係を維持していますので、主要なターミナル立地に次々と出店することができました。また伊丹を除く新千歳、成田、羽田、関西、福岡の国内主要5空港内にも出店しています。こうした積極的な出店の一方、不採算店舗の閉鎖も進めるなど効率経営を推進しました」

 コクミンの最大の特徴は、ドラッグストア業界で初めて化粧品を本格展開したこともあって、ターミナル立地を利用した化粧品のコンサルティング販売に定評があることだ。同社では、独自に養成したビューティのスペシャリストである「MBS」(モア ビューティ スタッフ)を拠点店舗に配置している。化粧品に特化した新業態「KOCOLO GARDEN」の展開も始めた。

 一方、調剤も併設を含めて積極的に多店化を推進している。2018年4月期には、調剤売上高が150億円を超えた。調剤構成比も25%前後の高い水準で推移している。なお同社では、薬剤師研修の一方、登録販売者も含めたヘルスケアのスペシャリスト「MHI」(モア ヘルシー インストラクター)を独自に養成して拠点店舗に配置している。

 絹巻家3代目となる和美氏の長男、絹巻秀展社長は、「国民の美と健康に奉仕するという経営理念を原点に、それを具現化した『総合ライフサポート事業』をさらに推進していきます」と語る。

 この一環として2017年6月、新たなフラッグシップストアとして東京 原宿竹下通りの好立地に「原宿店」(東京都渋谷区神宮前、売場面積82坪)をオープンした。

 「原宿店は、当社最大のメイクアップ化粧品売場などをはじめ、若い女性の感性に合わせた情報発信基地としてSNSなどを活用した新しいトレンドを発信しています」

 出店は毎年2桁以上のペースで、2017年4月期は10店、2018年4月期は13店を新設した。売上高は2017年4月期が622億円、2018年4月期が680億円と着実な伸びを示している。店舗数は2018年4月期末で192店、うち調剤取り扱いは42店となっている。

 (次回は、CVS ファーマシー デビッド B.リカード副社長兼CFO)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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