【週刊粧業2020年6月29日号12面にて掲載】
ウォルグリーンに次ぐ全米第2位のドラッグストア、「CVS ファーマシー」(現CVS ヘルス)の本部があるアメリカ東部 ロードアイランド州のウーンソケットを2000年代初めに訪れ、デビッドB.リカード副社長兼CFO(チーフ フィナンシャル オフィサー)にインタビューした。管理部門を総括するリカード副社長は、穏やかな風貌で親しみやすく、私の質問に率直に答えてくれた。
1990年代から2000年代にかけてCVS ファーマシーは後述するように巨大なM&Aを連続させ、急速に企業規模を拡大させていた。まさに急成長の最中におけるインタビューだった。成長戦略の数々を質問するなかでとくに印象に残ったリカード副社長の言葉がある。
「アメリカでは、薬剤師のステイタスが高いと聞いているのですが」
「我が国では、自分や家族の健康について的確にアドバイスしてくれる薬剤師は、医者や弁護士といった人たち以上に尊敬されています。ですから当社の薬剤師は、こうした地域の人々の健康を支えるために日々努力していますし、そのための教育にも力を入れています」
CVS ファーマシーの創業は1963年と、ライバルのウォルグリーンの1901年に比べて60年近く若い企業である。マサチューセッツ州ロウエルで、スタンドリーとシドニーのゴールドスティン兄弟によって創業された。店名は当初からCVSだった。CVSといっても、日本のコンビニエンスストアではなく、コンシューマー バリュー ストアの略である。
CVS ファーマシーの歴史は、巨大M&Aの歴史である。
1997年には、全米ドラッグストアの歴史で当時最大と言われた2500店を展開していた「レブコ」を買収し、中西部、南東部に大きな地歩を築いた。さらに2004年には、1288店を展開していた「エッカード」を買収している。
2006年には、フード&ドラッグの元祖であるアルバートソンズから、「セーブオン」と「オスコー」という2つのドラッグストア計700店を買収している。さらに2008年には、老舗ドラッグストアで著名だった「ロングス ドラッグ」を買収した。2015年には、ディスカウントストアのターゲットから1600店のドラッグストアコーナーを譲り受けている。
こうしたドラッグストア同業だけではなく、ヘルスケアに関わる有力企業の買収にも積極的だった。1994年には、調剤薬運営管理(PBM)の専門企業である「ファーマケア」を、2000年には、スペシャルティ ファーマシーの「プロケア」を、2007年にはPBMの「ケアマーク」を、2015年には慢性疾患を治療する「オムニケア」をそれぞれ買収している。
そして2018年には、全米有数の健康保険管理会社「エトナ」を総額690億ドル(約7兆5000億円)で買収している。同社史上最大規模の買収である。
この結果、同社の企業規模は急速に拡大し、2019年度(1~12月)の業績見通しは、売上高で2542億ドル(約27兆円)、営業利益で150億ドル(同1兆6000億円)を見込んでいる。企業規模ではウォルグリーンを凌ぐ全米有数の巨大企業となっている。(次号は、阪急オアシス 千野和利前会長)