第25回 「巨大M&Aの連続で急成長」(CVS ファーマシー デビッド B.リカード副社長兼CFO)

【週刊粧業2020年6月29日号12面にて掲載】

 ウォルグリーンに次ぐ全米第2位のドラッグストア、「CVS ファーマシー」(現CVS ヘルス)の本部があるアメリカ東部 ロードアイランド州のウーンソケットを2000年代初めに訪れ、デビッドB.リカード副社長兼CFO(チーフ フィナンシャル オフィサー)にインタビューした。管理部門を総括するリカード副社長は、穏やかな風貌で親しみやすく、私の質問に率直に答えてくれた。

 1990年代から2000年代にかけてCVS ファーマシーは後述するように巨大なM&Aを連続させ、急速に企業規模を拡大させていた。まさに急成長の最中におけるインタビューだった。成長戦略の数々を質問するなかでとくに印象に残ったリカード副社長の言葉がある。

 「アメリカでは、薬剤師のステイタスが高いと聞いているのですが」

 「我が国では、自分や家族の健康について的確にアドバイスしてくれる薬剤師は、医者や弁護士といった人たち以上に尊敬されています。ですから当社の薬剤師は、こうした地域の人々の健康を支えるために日々努力していますし、そのための教育にも力を入れています」

 CVS ファーマシーの創業は1963年と、ライバルのウォルグリーンの1901年に比べて60年近く若い企業である。マサチューセッツ州ロウエルで、スタンドリーとシドニーのゴールドスティン兄弟によって創業された。店名は当初からCVSだった。CVSといっても、日本のコンビニエンスストアではなく、コンシューマー バリュー ストアの略である。

 CVS ファーマシーの歴史は、巨大M&Aの歴史である。

 1997年には、全米ドラッグストアの歴史で当時最大と言われた2500店を展開していた「レブコ」を買収し、中西部、南東部に大きな地歩を築いた。さらに2004年には、1288店を展開していた「エッカード」を買収している。

 2006年には、フード&ドラッグの元祖であるアルバートソンズから、「セーブオン」と「オスコー」という2つのドラッグストア計700店を買収している。さらに2008年には、老舗ドラッグストアで著名だった「ロングス ドラッグ」を買収した。2015年には、ディスカウントストアのターゲットから1600店のドラッグストアコーナーを譲り受けている。

 こうしたドラッグストア同業だけではなく、ヘルスケアに関わる有力企業の買収にも積極的だった。1994年には、調剤薬運営管理(PBM)の専門企業である「ファーマケア」を、2000年には、スペシャルティ ファーマシーの「プロケア」を、2007年にはPBMの「ケアマーク」を、2015年には慢性疾患を治療する「オムニケア」をそれぞれ買収している。

 そして2018年には、全米有数の健康保険管理会社「エトナ」を総額690億ドル(約7兆5000億円)で買収している。同社史上最大規模の買収である。

 この結果、同社の企業規模は急速に拡大し、2019年度(1~12月)の業績見通しは、売上高で2542億ドル(約27兆円)、営業利益で150億ドル(同1兆6000億円)を見込んでいる。企業規模ではウォルグリーンを凌ぐ全米有数の巨大企業となっている。(次号は、阪急オアシス 千野和利前会長)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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