第29回 「平和を祈る創業者の思い」(平和堂 夏原平和会長兼CEO)

【週刊粧業2020年8月10日号8面にて掲載】

 平和堂の店名は、夏原平和会長の名前に由来する。夏原会長は私とほぼ同世代の1944年生まれで、創業者である父、夏原平次郎氏が長男誕生に際して「平和に生きて欲しい」との思いで「平和」(ひらかず)と名付けた。

 同社の創業は1957年で、「靴とカバンの店 平和堂」がスタートである。2017年には創業60周年を迎え、総額40億円を投じた新本部ビルを完成させている。

 新本部は、敷地面積9000坪、3階建て、延床面積4300坪という立派なビルで、3階に大規模な研修センターが設けられている。

 新本部ビル完成に際して夏原会長は、「創業60周年を一つの通過点として、次は100周年、『100年企業』をめざします。100年企業に向けて最も大切なことは、それを担う人材の育成です。この一環として『経営者育成塾』をこのほど立ち上げました」と語る。

 このほか60周年を機会に、総額40億円を投じた「新基幹情報システム」も本格稼働させており、100年企業に向けた体制を着々と整備しつつある。

 夏原会長は1968年、同志社大学法学部を卒業して平和堂に入社し、1989年に社長に就任して以来28年間、同社の成長発展に尽力した。

 2017年には代表取締役会長兼CEOに就任し、平松正嗣専務が代表取締役社長兼COOに昇格して現在に至っている。

 同社は、滋賀県を中心に、京阪、北陸、東海地区に152店(2019年8月現在)を展開しており、うちGMSが61店、スーパーマーケットが91店となっている。

 だが売上高はGMSが6割、スーパーマーケットが4割で、売上の過半をGMSが占めている。しかし2010年から新設はスーパーマーケットに絞り込んでおり、売上高の4分の3を食料品が占めている。

 「当社を含めて大手各社もGMS改革に取り組んでいますが、目立った業績回復には至っていないのが現状です。お客さまの買物行動や価値観が大きく変化しており、それにGMSが対応できていないのが現状です。こうした状況を打破するため当社は現在、衣料品、住居関連品でショップ化に取り組んでいます」

 その代表例が、化粧品とパラエティ雑貨を中心とする「CoCoRo Plus」で、GMS改革の新しいビジネスモデルになりつつある。スピンオフしたショップも既にオープンしている。

 なお2019年10月に増床改装した「アル・プラザ富山」(富山市)は、増床後の売場面積が1万9000坪と同社最大規模のSCとして、これまでのGMS改革を集大成している。

 SC全体の年商は280億円を見込んでいる。また5年前からスーパーマーケットを中心とする食品売場の改装にも本格的に取り組んでいる。

 一方、海外での展開では1998年、中国 湖南省長沙市に「平和堂(中国)有限公司」が1号店をオープンしており、現在、長沙市を中心として4店の百貨店を展開している。

 私は2008年、長沙市を訪れ、この1号店を取材した。ちょうど開店10周年記念セールの真っ最中だったため、店内は大混雑で、年末のアメ横を連想させる大繁盛だった。

 中国も外資を含めた競争は激しさを増しているが、平和堂(中国)有限公司はコンスタントな収益を確保している。

 国内では2019年10月、京都府内に2番目となる大規模センターを開設するなど、新たな成長に向けた体制を着々と構築している。

(次回は、薬王堂 西郷辰弘社長)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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