第38回 「欧米を運転して回って感じたことなど」

【週刊粧業2020年11月16日号4面にて掲載】

 この連載もそろそろ終盤に近付いてきた。この辺でちょっと一休みして、取材に関わるエピソードなどをいくつか紹介したい。

 お気づきの読者もおられると思うが、海外主要小売業の経営トップとも数多く交流してきた。とくに欧米の場合は、長年の友人である吉川新氏に通訳をお願いしてきた。

 彼は長崎県五島列島の出身で、上智大学の文学部を卒業して、フランスを中心に観光ガイドの仕事に就いていた。アメリカでは、日本リテイリングセンターの渥美俊一 チーフコンサルタントの仕事も一時手伝っていたこともあって知り合いになった。

 フランス語、英語が堪能で、奥さんがイタリアとアメリカの混血ということもあって、イタリア語も話すことができた。

 私より4歳下の昭和22年生まれで、180センチを超える長身だったこともあって、私の欧米取材にはほとんど彼が同行し、通訳兼ナビゲーター兼ボディーガードを務めてくれた。

 私自身、運転が好きで保険の関係もあって、レンタカーはほとんど私一人が運転した。残念ながら彼は13年前、アリゾナ州の自宅で心筋梗塞のため急逝された。

 アメリカの場合、小売業の本部は、発祥の地に置かれている場合が多い。日本のように東京、大阪、名古屋などに集中していない。

 その最たるものがウォルマートである。アーカンソー州北西の小さな町ベントンビルにいまも本部を置いている。

 結果的に、ワイオミング州など国立公園などがある一部の観光が中心の州を除き40数州を運転した。主要都市はほとんど訪れている。

 国際免許を取るのは簡単だ。普通免許があれば、顔写真を付けて申請するとすぐ交付される。有効期間は1年間である。

 ご承知のようにアメリカや、イギリスを除くヨーロッパは全て右側通行である。最初のうちは戸惑ったこともあったが比較的すぐ慣れた。

 アメリカの州間高速道路(インターステーツ)は原則無料である。南北を走る一級道路は西海岸の5号線から東海岸の95号線と奇数の10刻み、東西の場合は南から10号線、一番北は90号線と偶数の10刻みである。

 このため、インターステーツの番号を見れば、いま自分がアメリカ大陸のどの辺を走っているのかがわかる。制限速度はロサンゼルスなどで55マイル(89キロ)、郊外で65マイル(105キロ)となっており、パトカーがいつも取り締まっている。

 ヨーロッパも、速度制限が設けられており、高速道路の場合は130キロが多い。だが取り締まりがあまり厳しくないこともあって150キロ以上で走っている車が多い。私もそれ位の速度で走ったが、ベンツやBMWにスッと追い抜かれた。

 またAT車が少なく、ほとんどがMT車(マニュアルシフト)なので、やや面倒だった。フランスでプジョーをレンタルしてドライブインで停めようとしたら、どうしてもバックギアが入らない。

 そこで近くの人に聞いたら、バックに入れるには、一度シフトレバーを引き上げるのだと教えてくれた。「あんたたち、それでよくここまで運転して来れたな」。一つ利口になった。

 走りやすさで言えば何と言ってもアメリカだ。どんな田舎でも片側2車線以上ある。しかも自転車やバイクなどはほとんど走っていない。高速道路の両側には木が植えてあり目に優しい。そのため何百キロ走ってもそれほど疲れなかった。

 だが景色はヨーロッパ、とくにスイスが最高だった。4000mを超えるアルプスの峰々を背景に走るドライブは、まさしくサウンド オブ ミュージックの世界だった。いまでもあの光景をときどき思い出す。

 (次回は閑話休題。関西スーパーマーケット創業者 北野祐次 元社長)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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