【週刊粧業2021年2月8日10面にて掲載】
コロナ禍においても勢いが衰えない中国の化粧品業界。それをチャンスと捉え攻勢をかける動きが広がっている。しかしそこでは中国国産ブランドが急成長し、存在感を放っている。
今回は年初に発行したレポートから、再度、中国の化粧品市場を俯瞰してみよう。
トレンドExpressでは今年1月、中国国内コスメ業界の関連データ、クチコミ、EC流通額などを調査した『中国化粧品マーケティング白書(以下「白書」)』を発行した。
そこからは、中国コスメ業界の苛烈な市場競争と、お国元である中国ブランドの存在感が際立つ様子がわかる。
まず天猫のスキンケアカテゴリー流通金額のブランドシェアをみると、トップ2はLOREAL、SK₋Ⅱが占めているものの、それに続く中国ブランドの躍進が目立つ。「一葉子」「玉澤」「WINONA」等は、19年9月と比較すると20年4月にはシェアを大きく伸長させており、それ以外でもランキングの多くを中国ブランドが占めている状況だ。
メークアップカテゴリーを見てみると、中国ブランドの強さがより顕著である。
上位は「完美日記」、「花西子」など中国ブランド躍進の象徴とも言える有名ブランドが並ぶ。さらに、その他の中国ブランドも相対的にシェアを伸ばしており、トップ2の欧米ブランドのシェアを侵食し始めていた。メークアップ市場は中国ブランド同士の激しいシェア争いが起きているのである。
ランクインしたブランドを国別に整理してみると、スキンケアにおいては中国ブランドがシェアの6割を占めており、メークアップでも50%以上となっている。メークアップではかつて韓流ブームに伴い韓国ブランドが存在感を放っていた時期もあったが、それを中国ブランドが奪った形だ。
こうした中国ブランドの勢いは、日本を含めた外国勢が長年優位と言われてきたスキンケア市場においても、天猫の流通金額シェアを見る限り、確実に出てきている。
そんな中国ブランドの成長を牽引しているのが「完美日記」、「花西子」の2大メークブランドである。
「白書」ではこの2ブランドのクチコミ調査も実施している。(表参照)
現代的で華やかな色彩と話題性のあるイメージキャラクターを次々に起用し、インパクトを与えている「完美日記」と、中国宮廷や少数民族・苗族の意匠など「国潮(中国風デザイン)」を強く押し出し支持を広げている「花西子」は、中国メークブランド間でも異なる路線でそれぞれの立ち位置を確保し、市場での生き残りと拡大を図っているのが見て取れる。
「花西子」については、独特の商品デザインとマーケティングで熱烈なファンも多いが、模倣品対策も特徴的だ。
模倣品のファンをも自社に取り込む施策を展開し、新しい形の模倣品対策として注目されている。
こうしたことからも、中国ブランドがより消費者と密接な関係を作り上げているとみていい。
この2ブランドに加え、スキンケアでは敏感肌向けブランドとして「WINONA」が幅広い層に支持されている。
これら中国ブランドに対抗すべく、欧米系大手のエスティ ローダー、ランコム、ロレアルは、現地でのマーケティングを強化している。
競争激化する中国化粧品市場では、こうした勢いのあるブランドと渡り合うために、正しい市場理解が不可欠である。