連載コラム

激変するコスメマーケット

2021.04.02

第63回 「化粧品を売る」ことの意味を考えたい

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

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【週刊粧業2021年3月29日号4面にて掲載】

 通常は化粧品通販のお客様にお話を聞く機会が多いが、今回は久々にフェイシャルサロンを愛用しているお客様のお話を聞いた。

 コロナ禍の自粛ムードの中で、サロンに通う回数も減っており、閉鎖したサロンも多いと聞いている。そんな中でも、定期的にサロンに通って施術をしてもらうことが、「至福の時間だ!」というサロンのロイヤルユーザー様たちのお話だ。

 ほとんどのお客様がサロンで施術代を払って、同じ化粧品(サロン推奨の化粧品)をホームケアでも使用している。月間の施術代+化粧品代は約5万円、年間の美容&化粧品代は100万円弱のお客様たちだ。通販化粧品の仕事が多い私から見ると、喉から手が出るほど羨ましい客単価である。

 どうしてそんなにフェイシャルエステにお金をかけられるのか……。若いころ肌悩みがあまりなかった私としては、(今は肌悩みが多い年代になってしまったが……)とても不思議でならなかった。しかし今回のお客様のお話を聞いて、その理由を少し理解できた気がした。

 まずほとんどのお客様が、20代前半にニキビなどに悩まされてフェイシャルエステに通い始め、やっと治ったという経験や、大手メーカーの化粧品が合わなくて肌荒れに悩まされた経験を持っている。

 その後、お手入れをやめたらまた元のように悩まされるのではないかという不安が、このお客様たちがサロンに通い続けているモチベーションになっている。

 またある程度長く通っているお客様たちは、施術者と友達のような関係になっており、個人サロンや小型のサロンに10年20年と通っている例も多かった。しかも施術者とは、熱い信頼関係で結ばれている。

 40歳のあるお客様は、個人サロンの70代のベテランエステシャンの元に毎月定期的に通っている。母親のような世代の施術者を「私の人生の師匠」と呼ぶ。

 彼女曰く、「とにかく美容知識が豊富で、お手入れテクニックもすごい。自分ですべてを試して、納得したものだけを施術に取り入れている。いつも新しい情報にアンテナを張っているらしいので、70代とは思えない程、美容についてはチャレンジャー。本人もとても若々しく美しい人なので、個人的に尊敬している。」とのこと、また個人サロンなのでエステシャンの自宅で施術してくれるため、暮らしぶりや住まいのしつらえなどもとてもきちんとしており、私生活も「私のお手本」と言い切る。

 私にも経験があるが、若いころ地方の実家を出て都会暮らしをしていると、母親から美容や服装などのおしゃれのこと、住まいの整え方や日常生活の行事などについて、教わる機会がほとんどなくなる。

 パリで暮らした経験のある知人に言わせると、何世代もパリで暮らしている女性たちは、母親からおしゃれのルールを伝承する機会が多く、それが当たり前になっているという。

 図らずも、このエステシャンとお客様は、そんな関係になっており、「人生の師匠がお手入れの仕方と良い化粧品を薦めてくれる関係」になっているようだ。

 これがまさしく究極の「化粧品を売る」ということなのではないかと思う。

 お気軽なセルフセレクションの店舗や、通販メディアで衝動買いするのではなく、母親が生き方やお手入れ方法と一緒に化粧品を教えてくれるような、そんな信頼関係のある人から購入する化粧品は、商品の価値を何倍にも高めるに違いない。私もこのような人から化粧品を買ってみたいと思える話だった。

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プロフィール

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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