第91回 コロナ禍は化粧品の消費をどう変えたか?

【週刊粧業2023年12月11日号8面にて掲載】

 この3年間私たちが経験してきたコロナ禍の中で、化粧品の消費行動はどのように変化したのか? 自分自身や身近な人々の行動、お客様調査などを通じて感じたことをまとめてみた。

 まず2020年にコロナ感染が拡大し、緊急事態宣言のもとに百貨店は閉店、インバウンドの旅行者も激減、化粧品の店頭販売は大きな打撃を受けた。その間、通販化粧品業界は多少売上を伸ばした。もともとスキンケアアイテムがメイン商材の業界だったこともあり、大きく拡大したという訳ではないが堅調に売上を伸ばした。ヘアケアや入浴剤は「巣ごもり美容アイテム」として拡大したようだ。

 その後、閉店状態が長く続く状況に対応して店販化粧品各社は、電話カウンセリング、Webミーティングやセミナー、イベントなどを開催し、非対面販売の手法を取り入れ始めた。今では、Web接客、肌診断&AI活用のアドバイス、オンラインセミナー、オンラインカウンセリング等、デジタルを通じた販売はなんでもできる体制になっている。

 そして今日では、店頭販売が回復してきて、インバウンドも盛り返してきたため、店販化粧品各社は、店舗でも通販でも販売できる“二刀流”を身に着けている。そんな中で、消費者の化粧品購入行動は、どう変わったのか?

 毎月、いろいろな化粧品会社のお客様をインタビューしていると、ここ5年でお客様の購入マインドが大きく変化したことがよく分かる。お客様は「本当に効果があるもの」「根拠があること」を化粧品に求めるようになった。コロナ禍とその後の価格高騰を経て、“損をしない消費行動”に変化しているのだ。

 通販化粧品の新規獲得は、ここ数年「ベネフィットワード」がキャッチコピーに入っていないとレスポンス率が低かった。今ではその理由や背景の説明が求められている印象だ。「私にとって必要かどうか」が厳しく判断されて、しかもその理由を求めているので、美容成分まで問われることになる。

 いわゆる「エビデンス重視主義」が話題になっているのも当然と言える。最近弊社で行った調査では、購入する前に必ず成分表を見る人が多くなったことが分かった。アンケート調査でも、消費者が知っている美容成分の種類が以前より増えている。各メーカーの広告やLPに影響されているとも考えられるが、かつて美容成分と言えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタ、セラミド等4つ程度だったが、今では多くの成分名を知っている。

 加えて最近の傾向として、「他人の肌ではなく、私の肌に何をしてくれるのか?」というパーソナル対応が求められている。同じブランドを使用しているお客様に一緒にお話を伺っても簡単に同調はしない。「あなたはそう感じたのね。私は違うわ」ということをしっかりと主張する。

 そのため肌診断とパーソナルカウンセリングは化粧品販売にとって、不可欠な条件になると考えられる。まだ体制の整っていない通販化粧品会社に対して、お客様が「Zoomで教えてほしい」と要求することすらある。つまり、コロナ禍以降の化粧品の消費行動は、「パーソナル」「ベネフィット」「機能性」が求められるようになりつつあるのだ。
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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