第5回 サステナブルパッケージの真髄

【週刊粧業2024年1月22日号7面にて掲載】

 第3~4回で述べてきたように、グローバルでマイクロプラスチックに関する取り組みが極めて急務となっている。

 国内外問わず、企業が行うサステナブル施策の代表例がプラスチックソリューションとなっている。製造プロセスにおいて、サステナブル転換をするにあたり、容易に転換できる工程がどの加工産業においてもパッケージであることは否定できない。

 石油原料の削減のために、プラスチック製パッケージをバイオマスプラスチックなど生分解性素材に変更する、もしくは混合するものが増えた。プラスチック製以外でも、紙製容器や包装もサステナブルな素材へ転換することや、リサイクルなども盛んになってきており、もはやこれらは言うまでもない。

 最近、国連でプラスチック問題として改めて言及されていることは、2040年までにプラスチックのサーキュラーエコノミーにシフトし、4・5兆ドルをセーブすることや、海洋ごみを80%減らして温室効果ガスの排出を25%削減することを目指すとしている。

 これを解決するには実はリサイクルだけでは対応できないとし、ワンウェイプラスチックを排除し、プラスチックを可能な限り長く使用して資源循環させることや、代替品へのイノベーション創造などが求められるとしている。

 一般的な土壌分解するもののほかに、国内でも水中分解されるものなども出てきている。しかし、どんなプラスチックでも燃やせばCO2は排出され、海に流せばマイクロプラスチックにもなりえる。また、バイオマスプラスチックなど100%未満の配合量だった場合、結局従来と同じ処理方法となる。

 本来のバイオマスプラスチック製の容器は、分解の詳細や形式、年数まで明記することが一般的であったり、たとえば自宅の庭で埋められないものは専門の処理施設が必要になるため、バイオマスプラスチックに変更したところで、消費者が正しく廃棄・分別などをしなければ意味がない。

 単にサステナブルパッケージに変えるだけでなく、使用する消費者への指南も企業として必要になる。グローバルではグリーンサプライチェーンの確立が当たり前になっており、その下流にまで、配慮を示すことが求められる。

 化粧品産業の場合には、パッケージが訴求の重要なツールとなっている。そのため、製品の機能性だけでなく、環境配慮の視点をアピールするには最適である。しかし、サステナブルパッケージの基準は、実は明確ではない。

 バイオマスプラスチックなどに代表される生分解性プラスチックの原料には、サトウキビ由来や海藻由来など植物由来のものが多いが、裏を返せば、石油由来を排除するために、当該原料を採集しすぎて枯渇してしまうことは、生物多様性の観点でも防ぐ必要がある。包括的でかつ、統合的な視点を持つことが重要となる。
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長井美有紀

日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事

化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。

https://sustainable-cosme.org/

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