富士経済がこのほど発表した2011年「化粧品のチャネル別市場調査結果」によると、震災による流通網の一時的な混乱や消費マインドの落ち込みが相まって、これまで成長の一途をたどってきたドラッグストアや通販を含め、全チャネルで縮小を余儀なくされた。
しかし近年の傾向として、働く女性たちの多くは、仕事に追われ日中に買い物ができず、帰宅後にネット通販を利用して化粧品を購入するようになっている。そう考えると、2012年以降の国内化粧品市場は、通販、中でもネット通販が安定した成長を見込める希少な市場となりそうだ。こうした中、メーカー各社は、国内ネット通販市場および中国ネット通販市場参入の動きを加速させている。こうした動向が鮮明になったことが、2011年の化粧品業界において最も大きなトピックスであった。
特に2012年4月にWebマーケティング(ネット通販)に参入すると発表した資生堂に多くの関心が集まった。また、発表は資生堂の後になったが、スタート時期は先行するかたちで、2011年12月からはコーセーが通販業の新会社「プロビジョン」を設立し、ネット専用商品の販売を開始。参入5年で年商100億円を目指している。両社とも強みである店販では獲得が難しかった働く女性層を取り込むことで、国内事業の立て直しを進める。
海外市場では、特に中国ネット通販市場で日系メーカーによる争奪戦が激しくなってきた。資生堂が2011年9月より継続的な2ケタ増収を目指しネット通販を開始。通販専用商品「ピュア マイルド ソワ」で80后世代の開拓を進めている。オルビスも7月より通販の独自ショッピングサイトを構築・開設し、インターネットチャネルでの化粧品通販を本格的に開始した。ドクターシーラボも同じく7月に中国の現地法人を作って2012年夏よりビジネスを開始する体制を整えた。
一方、「化粧品の効能の範囲の改正」が行われ、新たに56番目の表記として「乾燥による小ジワを目立たなくする」が追加されたことも2011年の化粧品業界におけるトピックスであった。これにより、保湿化粧品の訴求ポイントが増えたことは朗報といえる。しかしながら、シワの原因として「紫外線」を認めることが見送られたほか、肌悩みではシワと並ぶ悪しき一翼「シミ」の表記認可は迷宮入りしたままだ。
さらなるシワの効能範囲拡大に向け、「紫外線」や「シミ」などにも踏み込んで厚労省と折衝を積み重ねていくことが、次なる成長への布石となり、ひいては化粧品市場の約半分を占めるスキンケア市場テコ入れの切り札となる。そういう意味で、粧工連の今後の取り組みは、極めて重要になってくるだろう。
東日本大震災に際して、主要企業がスピード感を持って、現地のニーズに最大限配慮しつつ、企業の特徴を織り交ぜながら、資金と物資の両面から支援を申し出たことも粧業界における大きなトピックスであった。
初動において危機対応力の高さと社会的責任を果たす姿を生活者に示せたことは、今後の事業展開に好影響をもたらすだろう。
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