花王、炭酸の真皮組織に対する作用を新たに発見

粧業日報 2023年7月14日号 3ページ

カンタンに言うと

  • 皮内pHが低下することでエラスチン、コラーゲン、ヒアルロン酸の産生が促進
花王、炭酸の真皮組織に対する作用を新たに発見
 花王は、炭酸ガス(CO₂)が経皮吸収された際に起こる組織内のpH低下に着目し、真皮の主要な構成成分であり皮膚の弾力性維持に重要なエラスチン、コラーゲン、ヒアルロン酸(細胞外マトリックス、以下ECM)の産生に与える影響を真皮線維芽細胞において評価した。

 その結果、低pHの環境下では、いずれのECM産生も促進することを見出した。さらに、その作用メカニズムを解析し、細胞内シグナル伝達経路の一端を明らかにした。

 今回の研究成果は、Experimental Dermatologyにオンライン公開され、第48回日本香粧品学会(2023年6月23~24日・東京)にて発表した。

 炭酸が皮膚から体内へ浸透することで血行がよくなることは知られているが、同社ではこれまで、炭酸配合製剤の塗布によって落屑や炎症などが改善することを、表皮のpH低下を主たるメカニズムとして報告してきた。今回はさらに、皮膚の形状や弾力性の維持において重要な真皮機能への炭酸の有用性を期待し、正常ヒト皮膚線維芽細胞を用いて、細胞外環境のpH低下がECMの産生に及ぼす影響とその作用メカニズムを検討した。

 三次元皮膚モデルの角層側に炭酸配合製剤、pHを同一に調整した炭酸非配合製剤を添加し、炭酸の皮膚透過性と皮内pHへの影響を評価した。その結果、炭酸配合製剤を添加した場合のみ、pH低下が確認されたことから、製剤中に溶解した炭酸が角層側から真皮層まで浸透したことが示唆された。

 続いて、pHを6.5に低下させた培地、pH非調整(pH7.6~pH7.8)の培地にて線維芽細胞を培養し、エラスチン線維・コラーゲン線維の形成、ヒアルロン酸産生量を評価した。その結果、細胞外環境のpH低下により、皮膚の弾力性維持に関わる主要なECM群が同じように産生促進する極めて珍しい作用が明らかとなった。

 さらに、炭酸配合製剤の塗布により、真皮のECM産生が促進する可能性を追究するため、線維芽細胞が外部環境のpH低下を感受した際に活性化するシグナル伝達経路について検討した。その結果、線維芽細胞で特定の受容体がpH低下を感受すると、そのシグナルが細胞内で伝達され、活性化した情報伝達因子CREBがTGF-β1の産生を促すことが明らかになった。

 以上により、炭酸配合製剤の塗布が誘導し得る真皮のpH低下が、線維芽細胞のECM産生を促進することがメカニズムの一端とともに示された。今後も炭酸の多面的な作用を明らかにし、肌を美しく健やかな状態へ導くための検討を深めていく。
ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > 花王、炭酸の真皮組織に対する作用を新たに発見

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop