花王、乳幼児の臀部の肌状態と腸内細菌類との関係性を解明

粧業日報 2023年9月15日号 5ページ

花王、乳幼児の臀部の肌状態と腸内細菌類との関係性を解明
 花王は、乳幼児の腕や額、臀部の肌に存在する菌の量や菌叢の実態を調査し、臀部は他の部位より菌量が顕著に多く、相対的に腸内細菌類が多く存在していることを発見した。さらに臀部の皮膚上の菌の種類と皮疹との関係性を検討したところ、皮膚上の腸内細菌類の存在比率が低いほど、肌状態が良好であることを確認した。皮膚における腸内細菌類と常在菌のバランスが肌の状態に影響することが考えられる。

 今回の研究成果は、地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター皮膚科部長の馬場直子氏の協力のもと行い、日本小児皮膚科学会第47回学術大会(2023年7月15~16日・大阪府)にて発表した。

 花王では、乳幼児の肌状態や歩き方、睡眠など、さまざまな視点から研究に取り組んでいる。そのうちの1つとして、今回の研究では、乳幼児を対象に肌のいくつかの部位の菌量や菌叢の実態を調べ、肌の状態との関連性を明らかにする検討を行った。

 生後3~24カ月の乳幼児30名より、前腕、額、臀部の皮膚上の菌を採取し、次世代シークエンサーを用いて菌叢解析を行った。全ての部位の菌叢が解析できた乳幼児を対象とし、各部位の菌量や菌叢を比較した結果、乳幼児の臀部の皮膚の菌の総量は、額と比べて有意に多いことがわかった。

 また、各部位における皮膚常在菌や口腔内常在菌、腸内細菌の相対存在比率を検討した結果、臀部の皮膚は、前腕や額と比べて腸内細菌類の存在比率が高く、月齢が低い乳幼児はその傾向が強いことがわかった。

 この結果から、臀部は菌量や菌の種類で他の部位と異なる特徴があることが明らかになった。腸内細菌には消化酵素を持つものが多く肌を刺激する菌も存在することもわかってきていることから、臀部における菌の種類と肌の状態について検討を深めた。

 保護者が自宅にて撮影した生後4~8カ月の乳児36名の肛門周囲部、排尿部、臀部の写真について、専門家が皮疹スコア判定を行った。また、乳児の臀部の菌叢解析を行い、皮膚常在菌や腸内細菌の相対存在比率を検討した。

 皮疹スコアと臀部の皮膚常在菌類や腸内細菌類の相対存在比率の関連性を検討した結果、皮疹スコアと腸内細菌類の比率に有意な正の相関がみられた。

 以上のことから、臀部の肌状態には腸内細菌類と常在菌のバランスが関係している可能性が考えられるという。

 今回の研究から、乳幼児の臀部は前腕や額といった他の部位よりも菌量が多く、腸内細菌類の比率が高いことが確認された。さらに乳幼児の臀部における皮疹の状態は皮膚菌叢中の腸内細菌比率と関連があることを見出した。

 皮膚上で腸内細菌が増えにくい環境を整えることは、乳幼児の肌をより清潔に保つ商品開発の一助になる可能性が高まったことから、今後も乳幼児の健やかな成長に貢献するモノづくりを進めていく。
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