容積効率を1.75倍に高め、植物研究施設への普及めざす
大成建設では、2009年12月より植物を栽培できる小型ユニットの販売をスタートした。スタンレー電気と共同開発したもので、薄型の発光ダイオード(LED)照明を光源に採用することにより、植物を水耕栽培する棚の間隔を狭くすることに成功。容積効率を従来比で1.75倍に高めるとともに消費電力量を低減している。
化粧品メーカーや化粧品原料メーカー、化粧品OEMメーカーでは、消費者のナチュラル&オーガニック志向の高まりを受け、機能性の高い植物研究・開発がますます盛んになっているが、栽培ユニット(長さ2150ミリ、幅685ミリ、高さ2100ミリ)が収まる一定のスペースと電源(コンセント)さえあれば導入可能で、週1回程度の液肥、給水を行えばよい今回の装置は、研究・開発でしのぎを削る化粧品メーカーにとっては、他社より一歩先を進むための一つの有効策になり得るものと思われる。
そこで今回、この栽培ユニットを開発に携わった大成建設㈱エンジニアリング本部新規事業グループの山中宏夫課長に話を伺った。
――小型栽培ユニットの開発に至った経緯は。
山中 当社では2001年、北海道樺戸郡に国内最大級の植物工場(建築面積6233㎡、延床面積8828㎡)を完成させ、全国各地に植物工場を建設してきたが、いきなり大規模な工場を建築する前に、小型の栽培ユニットで検証してみてから導入してみたいという要望がことのほか多かった。そうした要望に応えるため、小型栽培ユニットの開発に着手し、数年の開発期間を経て満を持して投入できた。
――工場内での植物栽培にチャレンジするのは従来から農業を営まれている企業が多いのか。
山中 2009年の施工問合わせ(270件)をみると、業種的な偏りはほとんどなく、遊休の工場を活用して、農業の将来性に賭けてみたいというニーズが増えている。一方、企業や工場の規模が大きければ大きいほど、工場を閉鎖することの影響は大きく、雇用が一気に失われると地域経済が疲弊してしまうといった問題もある。そうした観点から、次世代型の農業のあり方を、ハード(施設・栽培装置)とソフト(事業企画・販路開拓)の両面で提案する当社の取り組みが理解され始めてきたと実感している。
――自然栽培と比べた場合には割高だが、それを上回る利点とは何か。
山中 付加価値の高い植物を、台風など天災の影響を受けずに、無農薬で安定栽培できることが最大の利点だ。特定の地域でしか栽培できない植物から化粧品や健康食品を製造しているメーカーには是非導入して欲しい。多少割高にはなるが、リスクを回避することこそ重要で、工場での安定的な植物栽培を検討することは必要不可欠だと思う。
また、昨今の消費者は、食品偽装問題がクローズアップされるにつれ、食べ物や肌につける化粧品の選択には特に神経質になっている。そうした中、トレーサビリティーが完全に確保された植物エキスで化粧品を製造しているということが、差別化につながる素地は十分整ってきていると言える。
この記事は粧業日報 掲載
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