国内外に60社以上のグループ会社を持つダイセル化学工業(本社=東京・大阪)は1919(大正8)年、セルロイド会社8社が合併して操業を開始した。液晶用光学フィルムで使用される原料のシェアは世界トップ、ポリエステル繊維、煙草用フィルター、自動車用エアバッグにおいても国内トップシェアを誇る。
事業展開は多岐にわたり、化粧品業界にもその幅を広げており、素材の設計・配合処方を提案するウチ側からパッケージ製造のソト側まで、業界に対しトータル的に製品を提供する。
5月25~27日までパシフィコ横浜で開催される「CITE Japan 2011」では、ダイセル化学工業、ダイセル・エボニック、ダイセルパックシステムズがそれぞれの技術を駆使した素材を紹介する。
低刺激シャンプー用活性剤とナイロンパウダーの新製品を開発
ダイセルグループは、「安全安心、CO2削減、環境対応、塗る、落とす、包む」をキーワードに、環境に配慮した容器から植物由来成分、バイオ合成技術による機能性素材を製造し、処方提案も行っている。
ダイセル化学工業では、最新の研究によってたん白質保護シャンプー用活性剤の開発に成功した。安全性の高いポリグリセリン系の界面活性剤「セルモリスシリーズ」は、たん白変性作用が極めて低く、皮膚や髪を傷めにくい。タンパク質が流出し、皮膚内部の細胞間脂質の水分と油分のバランスが崩れると肌荒れの要因となる。毛髪の場合、キューティクルがはがれ髪質が悪化する。セルモリスを処方することで、タンパク質の流出を抑制し低刺激のシャンプーに仕上がるという。
「美容師の手荒れに着想を得た。美容部員や顧客にヒヤリング調査を行ったところ実際に美容師の洗髪時の手荒れが問題になっていることが分かり、肌や髪への刺激が低いシャンプーの素材を作れないかと考え、研究開発に至った」(前田克幸有機合成カンパニー機能材料開発室室長代理)
毛髪に対する保護効果は、各水溶液のたん白質溶出量比較試験や活性剤単独での毛髪刺激性試験などで実証済みである。美容師の手肌の荒れを抑え、髪質も傷めることがほとんどないことから、「サロン専売品に最適」(前田氏)としている。
同じく素材開発を手掛けるダイセル・エボニックは、乳化剤製造技術において世界トップクラスの実績を持つエボニック デグサ社とダイセル化学工業の合弁会社である。
新たに開発した「ダイアミド MSP―S ナチュラル」は、真球状の微粒子で平均粒子径は約10μに仕上げた。よりなめらかで、しっとり感のあるソフトナイロンパウダーであり、ファンデーション、アイシャドー、マスカラ、日やけ止めなどメークアップ化粧品全般に用途が広がる。
化粧品の感触改良剤に広く用いられているナイロン系微粒子ポリマーについて、ダイセル化学工業の技術で真球パウダーやその内部に無機フィラー(粒子)や添加物などを高濃度に内包させ、コンポジット(複合)するこの製法は真球状のパウダーを生みだし、形状・粒子径の制御ができるのが利点であるという。
また、ナノ酸化チタンやナノ酸化亜鉛を高配合したコンポジット・ナイロンパウダーの開発も手掛けている。このコンポジット・パウダーはナノ酸化チタンやナノ酸化亜鉛を高配合し、平均5μの微粒子である。昨今のナノ問題にも対応しており、日やけ止めのSPF値をブーストさせるパウダーとして処方提案するとともに、「素材の安全性の高さを顧客にアピールしていきたい」(千原英樹新事業開発部LSグループMSPリーダー)
パッケージに価値をプラスして差別化、グループの強み活かしニーズに応える
パッケージ包装技術によるソト側からのアプローチは、ダイセルパックシステムズが行う。食品用パッケージや精密機器の包装技術で既に実績を持つ。
マットな質感としっとりとした感触が特長の「セルピーチ」は、携帯電話の液晶部を搬送する際に、部品の傷付きを防止する技術を応用している。摩擦を防ぐ質感に加え、製品がトレーの中で回転することなく、常に「顔」が正面を向く。色味も独特で、すりガラスを透かしたような柔らかい発色が商品に高級感を与えるという。
「エコファンタジー」は、トウモロコシ由来のバイオマスプラスチック容器でCO2の排出量を削減する。耐衝撃性、耐熱性、耐薬性ともに高く、130℃で3分間加熱しても形状を維持することができる。
また、「グランアクア」は透明度が非常に高い外装用パッケージである。材質は一般的なPPだが、独自の技術により透明度を高め、本来の商品パッケージカラーを見せることができるという。
「パッケージの専門家として、何かプラスαの価値を付与し、商品の差別化を図る。導入実績も徐々に増えているので、今後の成長に期待している」(井元和彦営業部第一グループリーダー)
一見別物に見える問題も、グループが合同で取り組むことでメーカーや消費者ニーズに対しトータル的に応えていく。
この記事は週刊粧業 掲載
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