花王、東京理科大との共同研究は社会実装見据え新たなフェーズに

粧業日報 2024年5月7日号 2ページ

花王、東京理科大との共同研究は社会実装見据え新たなフェーズに

 花王は、東京理科大と2021年4月に共同研究契約を締結し、理科大初の共創プロジェクトである「花王Kireiな未来共創プロジェクト」を3年にわたり進めてきたが、契約期間満了に伴い活動を終了する。今後はより社会実装を見据え、新たなフェーズで連携していく。

 東京理科大は、企業との連携による社会貢献を目指し、新たな価値の共創を推進する研究組織として、総合研究院に共創プロジェクトを2021年から設置。「花王Kireiな未来共創プロジェクト」は、その初のプロジェクトとして、すべての人と地球にとってより清潔で美しくすこやかな暮らしがかなう「Kirei」な社会の実現を目標に、同年4月から始動した。

 らくらくヘルスケア「バイオ燃料電池・バイオセンサに関する研究」、持続可能な清潔生活「泡の制御・機能化に関する研究」、健やかな日常生活「痛みの神経・分子メカニズムに関する研究」、ECOモビリティ「セルロースナノファイバー(CNF)強化樹脂複合材料の構造材料への適用に関する研究」の4分野で数多くの研究成果を学会などで共同発表し、一部の成果を実際の商品へ応用するなど、社会実装につながる活動を推進した。

 一例として、持続可能な清潔生活分野では、「泡膜内の状態に着目した高品質な泡を作り出す技術の研究」に取り組んだ。身体洗浄料などには、洗浄成分として界面活性剤が使用されており、その量によって泡質や泡立ちが変わる。今回のプロジェクトでは、界面活性剤の使用量を抑えても心地よい泡を作り出すことを目指し、技術開発を行った。泡質を向上させるには、1つひとつの泡を作っている膜を安定させる必要があることはわかっていたが、これまでは膜の表面は解析できても、膜内を解析することは難しかった。今回、数十ナノスケールで分析できる理科大の先端分光技術を応用することで、初めて泡の膜内の状態を解析することに成功した。これによって泡の膜全体を安定に保つ技術を確立することができ、限られた界面活性剤量でも泡質と泡立ちを制御することが可能になった。

 ECOモビリティ分野では、「環境負荷のより少ないモビリティ実現のための炭素繊維強化樹脂の強度向上研究」に取り組んだ。航空機などに使用されている炭素繊維強化樹脂(CFRP)の強度をさらに高めることができれば、従来よりも部材を減らしたり、全体の重量を軽くしたりでき、結果的に燃料使用量の削減につながるため、研究ではCFRPの強度を向上させる材料として、木材由来で軽量かつ耐久性に優れたセルロースナノファイバー(CNF)に着目した。その結果、CFRPとCNFを組み合わせることで、耐久性を約1.8倍向上させることに成功した。今後は航空機や自動車などへの応用を目指し、関連メーカーとの共同研究を進めていく。

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