この連載では、BCP構築のポイントについて、ファシリティの視点を踏まえて解説しています。
今回は最終回として、策定したBCPの実効性をどのように向上させるかについて解説します。
◆BCPへの心構え
これまでの連載を踏まえ、BCPの構築と運用を進めるにあたってのポイントを3つにまとめてみました。
①「BCPはステークホルダーのために策定する」
事業継続(BC)戦略の第一義は役職員の方の安全と安心の確保です。それには、人命に及ぼす影響が高いリスクの徹底的な排除が最初のステップです。
次に取引先です。何らかの原因で停止した中核事業を、自社と取引先とでお互いに合意した「目標復旧時間」内に再開させ、製品を送り届ける必要があります。
また企業市民として社会的責任と貢献があります。事業を継続することで地域に雇用を創出すると同時に、日頃からリスクコミュニケーションを行なうことで、地域社会から愛され信頼される企業になることが重要です。
このようにBCPは、役職員、取引先、地域(住民)、株主といった、ステークホルダーすべてがハッピーになるための取り組みと言えます。
②「BIAで業務改善につなげる」
BCP策定の最初の取り組みとして重要なフェーズであるBIA(Business Impact Analysis:ビジネス影響度分析)は、自社を客観的に評価することで重要業務の流れ全体が明らかになります。これにより無駄な業務や改善すべきプロセスが把握でき、それらを変更・改善することで、目標復旧時間を短縮することにもつながります。
③従業員のモチベーションが要です
実際の被災現場で従業員の方々に積極的に活動してもらうには、BCPに対する理解と高いモチベーションが不可欠です。
日頃からリスクに対する意識や企業の取り組みについて従業員と情報共有し、彼らのBCマインドを高めることが重要です。
◆真に「事業の継続」を実現する社内体制とパートナーシップ
この図は、重要業務が停止した際の対応・手順をまとめるBCPの構築・運用と、重要なファシリティが停止しないためのリスクマネジメントのサイクルを示しています。企業活動としてこの2つの流れをしっかりとサイクルさせることが確実な「事業の継続」につながります。
特にリスクマネジメントのサイクルにおける重要なプロセスとして「生産機能の継続に欠かせない重要ファシリティは何か」といった、重要ファシリティの特定があります。
生産プロセスを把握して、関連する建物・建築設備・生産装置・ユーティリティ等をもれなく洗い出し、それら1つ1つが停止する可能性を、結果分析や原因分析などできるだけ多面的に評価することが必要です。それには、建築業者・設備業者・生産装置メーカーなどの協力が欠かせません。
自社の従業員だけではなく、このような会社とパートナシップを築き、2つのサイクルを回していくことが、実効性の高いBCPを実現する近道ではないでしょうか。
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