1998年に米国シリコンバレーで設立したPayPal Pte.Ltd.(以下、ペイパル社)は現在、世界203の国と地域で26の通貨に対応した世界最大規模のオンライン決済ツール「PayPal(ペイパル)」を展開している。
日本では2011年に提供を開始し、2012年末にはアクティブアカウントユーザー(過去1年の間に1度以上利用)数が100万人を突破するなど、順調な出足を見せている。
国内でのさらなる普及に向け、「化粧品通販での利用シーン拡大が鍵」と語るペイパル社東京支店の杉江知彦部長に、ペイパルの概要と今後の取り組みについて話を伺った。
高い利便性と安全性が評価され、
オンライン決済の国際標準に
――まずは、ペイパルの概要についてお聞かせ下さい。
杉江 ペイパルは現在、利便性と安全性の高い決済ツールとして、グローバルで約1億4800万人のアクティブアカウントユーザーを持ち、1日に約900万件を超える決済を取り扱うなど、オンライン決済ツールではグローバルスタンダードとなっている。
ペイパルのアカウントを作成する際には、クレジットカード情報と住所情報があらかじめ登録される。ペイパルを導入しているショップでは、従来のようにクレジットカード番号や住所を入力しなくてもIDとパスワードを入力するだけで簡単に決済ができるため、初めて訪れたサイトでも「ネットの衝動買い」が可能になる。
また、 ペイパルでは売り手側にカード番号などの個人情報を開示しないため、ハッキングによる情報流出のリスクがゼロになり、買い手側は安心して決済できる。
売り手側にとっても、カード情報を持たなければ個人情報を守る負担が一切かからないため、メリットは高い。
――電子商取引における不正防止について、ペイパルではどのような取り組みを行っていますか。
杉江 ペイパルでは、15年間の取引データをもとに作成された不正取引検知アルゴリズムと20000人規模の監視員を導入し、不正取引を未然に防ぐシステムを導入している。
それでも不正取引が起こった場合は、「バイヤープロテクション(買い手保護制度)」と「セラープロテクション(売り手保護制度)」により、オンライン取引における売り手と買い手の双方を詐欺や不正利用から保護し、安全なコマース環境を提供している。
買い手を守る「バイヤープロテクション」は、購入した補償対象商品(無形商品や特注品、航空券などを除く)が購入者のもとに届かないトラブルが発生しても、決済手段としてペイパルを利用されていれば購入金額の全額返還を行う。
Eコマースにおいてはこのように買い手側の不正取引に焦点が当たりがちだが、ペイパルでは売り手側の被害にも対応しており、他の決済ツールとの差別化を図っている。
売り手を保護する「セラープロテクション」は、商品を発送したにもかかわらず、買い手から「商品が届かない」などの理由でクレームやチャージバック、支払いの取り消しがなされた場合、商品代金や送料が補償される。日本では現在、このサービスを無料で提供している。
――化粧品通販を展開している企業に向けて、導入するメリットについてお聞かせ下さい。
杉江 化粧品業界におけるEコマースの課題は、「自社サイトの売上増」と「海外顧客の獲得」の2つが挙げられる。
ペイパルを導入いただければ、これらの課題を解決するツールとなるだろう。日本のEコマースは現在、大手ECショッピングサイトが市場を牽引しており、多くの化粧品メーカーは大手ECショッピングサイトに出店しつつ、自社サイトも運営している傾向にある。
ご承知のとおり、自社以外のサイトではテナントフィーなどが発生するため、自社サイトで販売するよりも利益は少なくなる。そのため、多くの化粧品メーカーは化粧品通販において自社サイトの売上げを高めたいというのが本音だろう。
では、なぜ国内で大手ECショッピングサイトに購買が集中しているのか。背景には、各企業が運営する自社サイトでの「会員登録」が購入の段階で大きなハードルになっている。インターネットで化粧品を購入する消費者の購買行動をみると、非常に多くのサイトで商品を閲覧している。
しかし、そのサイトごとに会員登録をして商品を購入するのは非常に面倒で、しかも複数サイトで会員登録をすると個人情報が流出するリスクもある。それならば、幅広いカテゴリーを取り扱う大手ECショッピングサイトに登録し、そこで購入するというのが通販利用者の購買パターンになってきてしまっている。
そこで、ペイパルを共通の決済手段として化粧品業界全体で導入することで、消費者はペイパルアカウント一つを持っていれば買い回りしやすくなる。
そのうえ、既にペイパルアカウントを持っている消費者であれば、初めて訪れたECサイトでもカード情報や住所といった面倒な入力をしなければならない負担が減り、「衝動買い」をしてくれるかもしれない。
また、ペイパルを導入することで自社サイトに訪れた一見客が商品を選択し、ショッピングカートに入れたにもかかわらず途中で買い物を中断してしまう「カゴ落ち」も減り、大手ECショッピングサイトに集中している通販ユーザーの購買行動も変わってくるのではないか。
協力企業と連携し、中小企業の
海外通販を全面的にサポート
――一方の「海外顧客の獲得」では、ペイパル導入によってどのようなメリットがありますか。
杉江 前述のとおり、ペイパルはグローバルスタンダードとして世界で採用され、1億人を超えるアクティブアカウントユーザーを持っている。
ペイパルを導入することで欧米や中国、東南アジア地域の消費者を取り込めるうえ、ペイパルと同じグループで世界最大級のオークションサイト「eBay」への出店も可能になる。
日本経済では人口減と少子高齢化が進み、全体のパイを拡げることが難しい状況にある。
そのため、多くの中小企業はビジネスを成長させるために国内だけにとどまらず、グローバルなEコマースを展開して海外に進出し、販路を広げていきたいと考えている。
しかし、グローバルなEコマースを展開するうえで、海外版サイトの開発やオンラインでのプロモーション、海外向けの決済・配送方法などが課題となる。ペイパルでは、決済システムの提案だけにとどまらず、日本では中小企業を中心に、グローバルなEコマースを展開するためのサポートサービスもパートナー企業とともに提案している。
「ゲストチェックアウト」の導入で
一見客の購入と会員獲得に期待
――国内ユーザーの新規獲得に向け、今後はどのような取り組みを展開していくお考えですか。
杉江 ペイパルのアカウント登録には、クレジットカードが原則というイメージが多いが、デビットカードやプリペイドカードでも登録することが可能だ。
さらに、来年中を目途にクレジットカードを持っていない人でも、銀行口座の情報だけでペイパルアカウントを登録できる仕組みを構築していく。
既に世界では欧米などで導入しているが、クレジットカードを持っていない人がネットショッピングに参加できれば、日本のEコマース市場はさらに活性化するだろう。
自社サイトを運営する企業からすれば、ペイパルを導入することでクレジットカードを持たないユーザーとの新たな接点を持つことが可能になるので是非おすすめしたい。
――最後に国内Eコマースの展望と貴社の今後の抱負をお聞かせ下さい。
杉江 日本のEコマースではCRMの観点から会員獲得を第一とし、まずは自社サイトの会員に登録してもらうことが主流となっている。
そのため、会員にならなくても購入してもらうルートが必ずしも明確でなかったり、サイトによっては会員登録が必須になっていたりするため、それらが理由で高い確率で一見客のカゴ落ちが発生している。
海外では、一見客が会員登録をしなくても商品を購入できる「ゲストチェックアウト」という考え方が一般的である。
「会員としてログインして購入」「新規会員登録して購入」「会員登録しないで購入」の3つの方法を消費者に明示することによって、より消費者の選択肢を増やし満足度を高めつつ、かご落ちも防げるだろう。
ペイパルはまさにこの「ゲストチェックアウト」に最適なソリューションを提供できるため、グローバルスタンダードになった。
日本でも既成概念を変えてまずは買ってもらう、使ってもらうことを第一にし、会員登録をその次のステップに移行してみるのも面白い取り組みだろう。
当社としては、今後も引き続き革新的なオンライン決済システムを提供し、通販を展開する企業のビジネスサポートに注力していきたい。
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この記事は週刊粧業 掲載
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