故長尾武次氏を偲ぶ

粧業日報 2022年9月12日号 6ページ

故長尾武次氏を偲ぶ
 巨星墜つ――。時代に先駆けた様々なチャレンジを現場で行い続ける傍ら、化粧品専門店業界の発展にボランティアの形で貢献し続けてきた長尾武次氏がお亡くなりになられたという報に接し、まずその言葉が頭をよぎった。

 大人物でありながら一人の人間として、常に目配り・心配りをし、謙虚であり続けている姿を目の当たりにし、人生の師としていろいろと学ばせていただいた。

 今から十数年前、入社して間もない私は化粧品専門店オーナーが集まる会合に初めて出席し、30歳以上離れた方々を前に緊張で足が震えたが、一際オーラを放つ人物が近づいてきて気さくに声をかけてくださった。それが長尾氏だった。

 以来、会合があるたびに声をかけてくださり、取材先に困った際には率先して取材にも応じてくださった。人脈がそれほどなかった当時、4年連続で長尾氏にインタビューをさせていただいたことは今ではとても貴重な経験となっている。

 そこで今回はインタビューの一節をいくつか紹介したい。

 現状への危機感を尋ねた際に長尾氏は「若い二世、三世を見ていると、自分で努力せずに教わってプロになろうとする傾向がみられる。カウンセリングの仕方を学んでくると、それに集中しすぎてしまうため、本質を見失い、お客様を減らすことになってしまう」と警鐘を鳴らし、「時代がどんなに変化しようとも『心』を大切にした商売をしていくべきだ。店先に商品1つ並べるにしても、お客様の立場になって考える。これが『感性』だ。感性というものは、日々店頭において研鑽を重ねて初めて育つ。顧客を満足させる『心』は自ら掴み取るものだと胸に叩き込んで、その時々の社会に順応したビジネスを展開してくれれば、お客様の癒しになり、喜びにもつながり、未来永劫にわたり存続し続けることができる」と語ってくれた。

 半世紀以上にわたり商売をされてきた自身の経験から50年後も繁盛し続けているお店のイメージについて尋ねた際には、「化粧のアドバイスを通してキレイになっていただくことに徹し、お客様に愛される店、必要とされる店であり続ける努力を惜しまなければ、どんな時代でも生き残っていける。しっかりとした経営感覚をもち、感性を磨くことも合わせて強化していってくれさえすれば、50年後にはきっと素晴らしい業態になっているだろう」とアドバイスを送ってくれた。

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