花王、環境中の新型コロナウイルスを精細に可視化

粧業日報 2023年1月26日号 4ページ

2023年1月26日 11時00分

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 花王ハウスホールド研究所は、理化学研究所 脳神経科学研究センター細胞機能探索技術研究チームと、北里大学大村智記念研究所、Epsilon Molecular Engineering(EME)と共同で、VHH抗体に蛍光タンパク質を組み合わせた融合タンパク質を用い、繊維に付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を簡便に可視化できる可能性を見出した。

 この成果を応用することで、新型コロナをはじめとする環境中の危険なウイルスの存在場所の詳細がわかるようになるだけでなく、ウイルスを不活化・除去できる製品の開発に役立つことが期待される。

 同社は長年、枯草菌による酵素などのタンパク質生産技術の研究・開発を行っており、昨今はその技術をもとに、感染症対策に役立つタンパク質としてVHH抗体の研究を進めている。2020年には、北里大学、EMEとの共同研究により新型コロナウイルスに対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功した。

 このVHH抗体の新型コロナウイルス治療薬としての有用性検討を目的に、2021年、北里大学、EME、慶應義塾大学医学部、生理学研究所と共同で、動物モデルにおいてVHH抗体の経鼻投与により新型コロナウイルスの増殖を抑制することを報告している。VHH抗体の治療薬としての可能性については、日本医療研究開発機構(AMED)の公募に採択され、枯草菌を用いた医薬品製造基盤構築を目指し北里大学、自然科学研究機構、EME、塩野義製薬の間で検討が進められている。

 一方で花王は、VHH抗体をウイルス研究のさまざまな用途に応用する検討も進め、2022年4月には、理研、東北大学の研究グループが創出したタマクラゲ由来の蛍光タンパク質StayGoldと、新型コロナVHH抗体を連結することで、感染細胞内で新型コロナウイルス粒子が成熟する経路を捉えることに成功した。さらに、理研、北里大学、EMEとの共同研究により、AzaleaB5、KikGなど高輝度な蛍光タンパク質と連結した蛍光VHH抗体は、口腔内から採取した検体を用いた新型コロナウイルス感染の診断ツールとして利用できる可能性があることも確認している。

 花王は、これまでに開発した新型コロナウイルスに結合するVHH抗体と高輝度な蛍光タンパク質を連結した融合タンパク質を用いて、感染後の新型コロナウイルスの動態や感染者の診断への応用を検討してきたが、今回はさらに環境中におけるウイルスの簡便な可視化技術の検討を行った。

 新型コロナウイルスをパラホルムアルデヒドで処理し感染能をなくした上で、ウイルスRNAを染色するSYTO82、Sタンパク質に結合するKikG融合VHH抗体を加えて染色ウイルス粒子を調製した。作製したウイルス粒子をポリエステル布に滴下し、繊維にウイルスを付着させ、蛍光顕微鏡で観察したところ、繊維上にウイルス由来の蛍光(SYTO82)とKikG融合VHH抗体由来の蛍光が同じ位置に検出された。

 この結果は、繊維に付着したウイルス粒子をKikG融合VHH抗体由来の高輝度な蛍光で可視化できる可能性を示している。さらにウイルスが付着した布を衣料用洗剤で洗たくしたところ、KikG-VHH融合タンパク質由来の蛍光が繊維上から顕著に減少することも確認できた。

 今回の検討により、これまで電子顕微鏡などでしか確認できなかった環境中のウイルス粒子が、高輝度な蛍光タンパク質と分子サイズが小さく高い結合性能を備えたVHH抗体による融合タンパク質によって、簡便に観察できる可能性が示された。

 また、ウイルスが付着した布から、洗たくによってVHH融合タンパク質由来の蛍光が減少する様子も確認できたことから、この技術を応用することにより、たとえばノロウイルスのような環境中のさまざまなウイルスの存在状態をも簡便に観察できるようになる可能性が示された。さらに、繊維上のウイルスが付着しやすい部位、衣類以外の環境に付着したウイルスとその除去の状態を可視化することで、「ウイルスを除去する技術開発に役立つ」(同社)という。

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