ライオンは、デジタル技術を活用し、研究開発における生産性の向上に取り組む一環として、製品の組成開発での活用を目的に、マテリアルズインフォマティクス(MI)を用い、研究員の知見を取り入れたデータ駆動型の実験計画手法を新たに確立し運用を開始した。
同手法をハミガキの組成開発に応用したところ、実験回数を大幅に削減し、想定の約半分の期間で開発できたことから、研究開発のスピードアップが期待される。
今後はハミガキだけでなく、様々な製品の組成開発にもこの手法を応用していく。
近年、生活者が製品に求める品質は多様化・高度化しており、生活者ニーズに寄り添った品質の高い製品を開発するためには、組成開発やプロセス開発において生産性を高めることが求められている。
同社では、これまでにMIを活用してプロセス開発における検討期間を短縮化するシステムを開発している。一方、組成開発では、従来、膨大な組み合わせの中から、研究データや研究員の知見に基づいて候補となる組成を考案し、実験を繰り返すことで、目標を満たす組成を絞り込んでいた。
しかし、新規成分の配合や品質項目の追加を伴うような開発テーマの場合、検討の初期段階では研究データが不足しているため、一定の検討期間を要していた。
そこで今回、MIの専門知識を持つ人材を育成し、同社の主幹事業であるハミガキの組成開発に活用できる実験計画手法を独自に確立することで、研究開発の生産性向上に取り組んだ。
ハミガキの組成開発においては、香味や泡立ち、ペーストの固さや滑らかさなどの使用感の良さや、むし歯や歯周病を予防する機能など、複数の目標を同時に満たすことが必要となる。そこで研究では、限られた既知データを起点に組成探索が可能な機械学習手法である「ベイズ最適化」に、研究員の知見を効果的に取り入れることで、より少ない実験回数で複数の目標を満たすことができる実験計画手法を確立した。
この実験計画手法を用いて、ハミガキの固さと滑らかさの物性指標である粘度と弾性率の最適組成を探索した結果、サンプルは100回以上作製することも珍しくない中、16回の作製で目標を満たす組成を導き出すことができ、追加工程を含めても想定の約半分の期間での組成開発を実現した。