花王、回収したCO₂を活用した植物工場「SMART GARDEN」を構築

粧業日報 2024年4月4日号 3ページ

カンタンに言うと

  • 栽培した植物を独自加工し、高純度の植物エキスの生産を可能に
花王、回収したCO₂を活用した植物工場「SMART GARDEN」を構築

 花王は、佐賀県佐賀市が有する清掃工場から排出されるCO₂を回収・精製できる設備を利用し、独自の植物工場「SMART GARDEN(スマートガーデン)」を構築した。さらに、栽培した植物からエキスの抽出まで一気通貫で行い、高純度・高効能な植物エキスを得ることができる成分制御技術の開発に成功した。

 天然由来の素材である植物エキスは、肌への様々な効果が期待されることから、多数の製品へ使用されているが、植物も栽培方法によっては、大量の水を使用することによる水資源の枯渇などが懸念されるケースもある。そのため、環境に極力負荷をかけずに採取されていることはより重要な要素となっている。

 同社は、3つの循環による持続可能性をコンセプトに、新たに植物工場「スマートガーデン」を構築し、ローマカミツレとローズマリーの栽培を行っている。

 1つ目は、CO₂の循環利用で、佐賀市の清掃工場から出るCO₂をCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)により回収・精製し再利用する。CO₂は植物の光合成を促進させるが、「スマートガーデン」では、このCO₂を植物に与えることで、生長速度が約20%向上することを確認した。

 2つ目は、水耕栽培による水の循環利用で、今回の栽培では水を繰り返し循環利用することで、露地での栽培品と比較して水使用量を約40%に抑えた。

 さらに3つ目は、再生可能エネルギーの利用で、「スマートガーデン」では使用する電力を全て地熱、水力発電といった再生可能エネルギーにすることでCO₂の排出を削減している。

 これらに加えて、「スマートガーデン」では空調、日照など植物の生育に必要な環境を常時モニタリングする。温度や照度などの栽培条件を高度管理することにより、水耕栽培での実績が少ないローマカミツレやローズマリーの量産に成功した。さらに、それぞれの活性成分である「アピゲニン」と「ロズマリン酸」の量を高め、一定の基準以上になるタイミングで収穫するスキームも確立した。

 植物エキスは、植物の特性により様々な成分を含有しているが、中には肌への効果が期待される成分以外も多く含まれるため、本来の性能を最大限に活かしきれないケースもあると考えた。そこで同社は、植物からエキスを抽出する際の加工技術を検討した。エキス中の活性成分を増加させるとともに、不純物を低減し、植物エキスを高純度化することで高い効能を実現することを目指した。

 今回は、植物体自身が有する酵素の働きを制御することで、活性成分の1つであるポリフェノール量を増量させる検討を行った。ローマカミツレの場合は、酵素の働きを活性化させることで、肌への効果を期待できるポリフェノール含有量が高まることを確認した。

 ローズマリーにおいては、酵素の働きによって収穫直後からポリフェノールの分解が始まるため、酵素を失活させる処理を行い、さらにポリフェノールを最大限抽出するプロセスを導入した。また、エキス中には、フルクトースなどの糖類をはじめ、最終製品の性状に悪影響を与えることもある様々な不純物が混在している。これに対し、活性成分は残しつつ、不純物を除去する独自プロセスを開発した。この結果、ローマカミツレエキスで97%、ローズマリーエキスで99%、不純物の1つであるフルクトースを低減させることが可能となった。

 上記の高純度化技術によって開発したエキスで、エキス自体の性状の改善効果と肌効能に対しての改善効果を確認したところ、ローマカミツレエキスでは一般的な露地栽培かつ不純物低減処理をしていない未処理品に比べて、保存前の透過率が48%改善すること、大腸菌・黄色ブドウ球菌の増殖を抑制すること、コラーゲンの糖化反応を抑制すること、ローズマリーエキスでは一般的な露地栽培かつ不純物低減処理をしていない未処理品に比べて、保存前の透過率が79%改善すること、大腸菌・黄色ブドウ球菌の増殖を抑制すること、肌バリアや保湿などの角層機能に関わるフィラグリン遺伝子発現量が増加すること、プラセボに対してバリア機能の改善傾向がみられることを確認した。

 今後は、花王グループの美容と健康を目指した製品などへ応用を検討していくとともに、将来的には海外を中心に原料として販売していく。

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