最近、ある通販化粧品会社のロイヤルユーザー様に集まっていただいてグループインタビューを行った。商品単価を通信販売ではやや高めに設定しているため、50代のお客様が中心だ。
さすがにロイヤルユーザーの集まりだけあって、ラインナップを揃えてご使用いただいているお客様がとても多かった。
お話を聞いていくと、初めからラインナップで購入したわけではないらしい。「最初の1品が気に入って、そのあと自然に揃えて定期購入するようになった。割引とか、その他の特典もあるので......」という声が寄せられた。
改めて、このようなお客様を増やしていくことが化粧品メーカーにとって、とても大事なことだと感じさせられた。
化粧品の商品開発は、使用手順に沿って使用感も考慮しながら開発をすると思うので、ラインナップで使用してもらった方が開発者の意図は伝わるはずである。
ところが、最近は化粧品をラインナップで購入してくれるお客様は珍しくなってしまった。店頭販売では、セルフセレクションのお店で自由に単品購入をするし、通信販売ではインパクトのある単品訴求やオールインワンなどの広告が目立ち、ますますラインナップでの販売が難しくなった。
その理由は、消費者である女性たちが、さまざまな美容や化粧品の情報を手軽に得られるようになったこと、そしてさまざまなチャネルで化粧品を購入するようになったこと、そのため化粧品に対する"ブランド意識"が大きく変わってしまったためであると考えられる。その効果を厳しく問い、価格に見合う価値を精査して購入していることも要因の一つである。
そんな中で今回お話を聞くことができたお客様たちとの出会いは、まだまだラインナップで使用してくださるお客様が多く存在することを教えてくれたので、とても心強く感じたものだ。
市場環境がいくら厳しくとも、自分たちが考え知恵を絞った商品は、揃えてご使用いただくことをあきらめずに販売したいものだ。
販売の手法として、まずは、広告を展開しやすい"ラインナップ"の中の1品を、いわゆる「看板商品(スター商品)」にしてもよい。そして、これを入り口にしてお客様に「ほかの商品も使ったみたい」と感じていただき、"ラインナップ"のヘビーユーザーに育成していくことが大切だと思う。
目先の売り上げだけのために"スター商品の単品"ばかりを訴求することは、本来の化粧品販売のあり方ではないと思う。
インパクトのある単品訴求をすれば、一時的に売り上げは伸びるかもしれない。
ただ、そのためにお客様自身が肌のお手入れをきちんとして、自分の肌と向き合う時間を少なくしてしまうなど、簡単、便利に"手抜きをする"状況を生んでしまうことは、問題だと思う。
化粧品の原点に立ち返ると、化粧品はお客様に毎日正しい肌のお手入れをしながら、毎日自分の肌と向き合うことで、もっとお肌に関心を持ってもらい、もっとキレイになっていただくためのもの。
そもそも肌にかける時間が少なくなり、肌への関心が低くなれば、将来的には化粧品マーケットを小さくしてしまうのではないかと思う。
そのためにも"ラインナップ"で売ることをあきらめてしまっては本末転倒になる。化粧品のマーケットを縮小させないためにも "ラインナップ"で売ることをあきらめてはいけないのではないだろうか。
鯉渕登志子
(株)フォー・レディー代表取締役
1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。
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