シニア向け化粧品の市場が拡大していることは、1年前にもこのコラムで取り上げた。ますますその傾向は強まり、今も数多くのシニア向け化粧品が発売されている。
国内で唯一拡大が見込める有望市場のため、競合も激化する一方だ。そこで、今回は競合に差を付ける有効な手段について考えてみたい。
私がお勧めしたいのは、徹底してターゲットを絞り込む作戦。それも「団塊の世代の女性たち」に狙いを定めてはどうだろう。 団塊の世代とはご存知の通り、昭和22年~24年生まれの世代のこと。この3年間に生まれた女性たちは、今63歳~65歳になる。彼女達は、これからの化粧品マーケットでは、たいへん大きな存在となる。
今後の10年間唯一、化粧品需要が大きく伸びる国内マーケットだと言ってもよい。これからエイジングケア商品を展開するなら、団塊の世代に絞り込んだマーケティングをお勧めしたい。
高度経済成長とともに青春時代を過ごした団塊の世代は、それまでの世代とは明らかに価値観が異なる。特に女性たちは、日本で初めて高学歴となった世代である。
そのため考え方は合理的で、育った環境からアメリカ的な正義感も強く、何よりも、家に閉じこもった"奥様"ではなく"外様"と言われるくらい活動的な中年時代を過ごしている。
そして今60代中盤を迎えた彼女達は、豊かな退職金や子育てからの解放など、ライフステージが落ち着く時期。全世代の中でも貴重な「ゆとりある世代」といえる。
価値観に応じた、合理的で賢い消費行動が基本となるため、選別眼はシビアなものの、自分が気に入った物は迷わず買う。同時に、様々な意味で"自分磨き"を怠らない。だからカルチャーセンターは彼女たちで大盛況だ。
その積極性に起因するのか、いつまでも若々しくいたいという願望も強く、エイジングケア化粧品に対する関心度は抜群に高い。
そんな「アクティブシニア」の団塊の世代は「友達ネットワーク」が非常に発達しているのも特徴的で、誰かが良いと判断したものは、スピーディーに口コミで仲間内に広く伝わっていく。この世代にファン組織を形成できると一気にブームが広がる可能性も秘めている。
では、そんな団塊の世代の女性達に、どういったアプローチが効果的なのか。第一に、彼女達は自分に自信を持っている事を忘れてはいけない。自分のことを「まだ若い」と信じているので、老人扱いすることは厳禁。30代後半~40代中盤のテイストに、高級感と落ち着きをプラスしていく程度と考えるとよい。
ただし、意識は若いが、体の衰えは避けられない年齢なので、細かい文字や長文の情報は彼女たちを疲れさせ、飽きさせてしまう。
情報を詰め込みすぎず、かつ、洗練された"おしゃれ感"が不可欠なのだ。
また、様々な悩みの解決法を知りたいのに、情報が不足している現状も何とかしてあげたい。
丁寧な解説や肌悩み解決方法など、彼女達が望む情報をしっかり、わかりやすく伝える事が必要になる。
もちろん知的で合理的判断ができる人たちなので、それに対応した説得力のある情報も不可欠と心得たい。
聡明でシビアな団塊世代の女性達の心を掴む製品ができれば、シニア世代向け化粧品は必ず成功するだろう。ぜひともチャレンジしてもらいたいと思う。
鯉渕登志子
(株)フォー・レディー代表取締役
1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。
紙面を探す
紙面を探す
レポートを探す
無料でダウンロード
カタログを探す
無料で見る
週刊/毎週月曜日発行
化粧品、日用品、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした生産・流通産業界の総合専門情報紙。
季刊/年4回
化粧品、日用品、アクセサリーなどの業界別の市場動向をはじめ、戦略、流通、経営、マーケティングを扱う情報専門誌。
週刊/毎週月曜日発行
化粧品、トイレタリー、石鹸、歯磨、日用品に関する情報の速報版。業界のエグゼクティブ必読の情報紙。
週刊/毎週月曜日発行
昭和33年に創刊された、わが国初の訪問販売化粧品業界の専門情報紙。