移転価格税制とは、海外取引を通した税金計算の基礎となる課税所得を小さく算定することによる国内での税金の支払額の意図的な圧縮を防ぐことを目的とした制度です。1つの例として、国内法人による海外販売子会社(国外関連者)への輸出販売の際、通常の取引先に対する販売価格より低い価格で販売すれば、国内法人で計上される売上高は当然低くなりますから、国内での課税所得及び税金の支払額は小さくなります。
一方で、海外販売子会社では、仕入原価が低く計上されますから、課税所得及び税金の支払額は大きくなりますが、海外販売子会社のある国の税率が日本より低い場合は、連結ベースで見ると税金の支払い額は小さくなるわけです。こうした所得の海外移転を防ぐために、上記のケースで言えば、海外子会社への販売価格が通常の取引先に対する価格(独立企業間価格)と違う場合には、独立企業間価格に置き換えて課税所得を再計算するのが移転価格税制です。この計算の結果、課税当局により修正申告が促されたり、更生処分がなされたりもします。
この移転価格税制は、2006年に武田薬品工業やソニー及びソニー・コンピューターエンターテイメントが巨額の更生処分を受けたことで注目されましたが、アジアを始めとした海外において製造拠点や販売拠点を持つことも少なくない化粧品・トイレタリー業界においても無視できない問題です。移転価格税制に基づく更生処分による税額は多額になるケースが多く、企業経営に与えるインパクトも大きいため、移転価格税制への取り組みは重要と言えます。
田中計士
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/
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