企業にとって、赤字のビジネスは当然撤退を考える対象となります。しかし、単純に赤字といっても、全ての赤字ビジネスからの撤退は必ずしも必要ではありません。事業戦略を考えるに当たって一般的に利用されている管理会計の概念として、限界利益があります。限界利益の定義は諸説ありますが、今回は話を簡略化するため、「限界利益=売上高マイナス変動費」とします。

 例えば、他社からOEM生産を受託している製造業I社でのケースを想定してみましょう。同社では、現在受託している製品Aが【図1】の通りトータルで赤字となっているため、製品Aの生産受託を解消すべきか否かの詳細な検討を始めました。

05-新日本図-36.jpg

 従来の採算管理表では、②原材料費は製品毎の実績値、③労務費及び④諸経費は、工場全体で発生するコストを暫定的に販売数量等で按分したものとなっています。

 ここでI社は、詳細な検討を始めるに当たって「限界利益」の概念を導入します。「限界利益」欄を設けた上で、【図1】の②~④の各種コストを製品の生産数量に対して比例的に発生する「変動費」(ここでは原材料費のみとします)と、生産数量と必ずしも比例関係とは言い切れない「固定費」(ここでは労務費及び諸経費とします)とに区別したところ、【図2】の通り製品Aは限界利益は黒字、トータルの利益は赤字という結果になりました。

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田中計士

新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー

2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/

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