第54回 『小さくはじめる』ことが大切

【週刊粧業2018年1月15日号10面にて掲載】

 販促やサービスなどの施策を考える際、コストや手間がかかることにばかり意識が行き過ぎ、実行に対して二の足を踏んでいる状況を見かけることがあります。確かに実現可能性が全くないようなことに打ち合わせ時間を費やしても無駄になりますが、あまりにも容易に実現できることばかりにとらわれ過ぎると、ユニークなアイディアが生まれず、さらには工夫するという姿勢を失うことにもつながりかねません。

 そこで、必要となる考え方が『小さくはじめる』というものです。いきなり、自社の顧客全てに向けたサービスにするのではなく、対象者を絞ったり、時期の限定をしたりすることで、コストや手間を抑えながら実行していくことができます。また、小さく始めることでそのサービスの反応を確認しながら、柔軟に修正を加え、徐々に全顧客に向けたサービスへと広げていけば良いのです。

 通販会社A社は、新商品開発の際、自社の顧客に向けての限定発売という形からスタートさせます。そのため、いきなり大ロットで製造する必要がないので、在庫リスクを抑えることができます。

 さらに、お客様からの反響を見ながら、処方の改良を加えたり、本格的に販売するのか否かを判断することができるため、顧客のニーズを取り入れた素早い新商品開発づくりができる社内体制を確立しています。

 化粧品通販会社B社は、お客様に手書きのお手紙を送ることで、親密な交流を行いたいと考えていました。パソコンで打ち込まれた文字よりも手書きの文字の方が、温かみがあり、想いが伝わるであろうと考えたためです。しかし、全顧客に向けて行うには量的に難しくなかなか実行に移せないでいました。

 そこで、リピート回数が多く、長くお付き合いをしている方を限定に、暑中見舞いや年賀状などを手書きで送るという取り組みにしたところ、無理のない形で継続した取り組みとして定着させることができました。

 化粧品通販会社C社は、コールセンターのオペレーターの応対品質の向上に向けた新しい取り組みをする際、100名以上いるオペレーター全員から研修をするのではなく、まずは、比較的セールス力、対応力の高いオペレーターを何人か選び、そのグループから研修を始めていきました。

 過去と大きく異なるやり方を取り入れる際、人はどうしても変化への抵抗感からか上手くできないと思い込んでしまうものです。そのような負の引力が強いと、全体が流され良い成果を上げにくくなります。しかし、数人からなる小さなグループから小さな成功が生まれていくことで、自分もできるかもしれないと周りのオペレーターも積極的に新しいやり方に果敢に挑戦していく空気感が生まれていくものです。

 新しい、ユニークな取り組みをやってみたいという施策があれば、まずは、小さくやってみることからはじめてみてはいかがでしょうか?
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船生千紗子

(株)通販総研 化粧品専門コンサルタント

通販に特化した広告代理店を経て、株式会社通販総研に入社。現在、化粧品通販新規参入支援、化粧品通販企業向けに新規顧客獲得、リピート顧客育成による売上アップ支援を行っています。クライアントの強みを伸ばし、着実な成長を促すことをモットーにしています。

https://www.tsuhan-soken.com/

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