第27回 悩みに寄り添っているか?

【週刊粧業2016年5月6日号6面にて掲載】

 久々にお客様のグループインタビューを行った。しかも様々な化粧品会社のお客様に集まってもらったので、多くの人からヒアリングすることができた。参加者の共通項目は、中高年世代であること、一度は通信販売で化粧品を買ったことがある人。そこで幾つかの特徴的な傾向が分かった。

 1つ目はこの世代の通販化粧品のお客様は、いろいろな会社の化粧品をよく知っているということ。
 購入する前からネットの口コミサイト等で徹底的に調べている。当然試し買いも多くなり、お試しセット購入や本商品を安く買って実際に自分で使用している。ネットの書き込みだけでは「自分に合うかどうかわからないので……」と言う。

 自分の肌と他人の肌は異なるし、好みも違うということをよく理解している。このお試し期間中に気に入らなければ、また別の化粧品を探し、満足しなければずっと探し続ける。

 つまり「少し贅沢なジプシー状態」になる訳だが、「気に入らないものをあきらめて使い続けることは無い」らしい。新しいお気に入りが見つかるまでの「一時的なマイブランドとして使っている」ということもあるようだ。

 あるブランドをフルラインで購入していたので「ロイヤル顧客」なのだろうと思っていたら、他社ブランドの高級品をもっと多く購入していた。そして「年金暮らしなので、あまりお金が使えないけれど……」とおっしゃる。

 2つ目は、通販とか訪販とか店販とか、業態ごとの販売チャネルを意識しているのは我々業界の人間だけで、消費者の方はいっこうに気にしていないということがよくわかった。

 TVでたまたま見かけたので通販で買ってみた、お友達がいつも届けてくれるので訪販で買っている、百貨店に買い物に行く時はおなじみの美容部員さんから買う、エステサロンでいつも勧められるので買っている等々、1人のお客様が業態などに関係なく様々なルートで、様々な化粧品を購入している。だからどの業態でも「新規客」とは言えない程、様々な情報を知っている。商品の特徴はもちろん、各社のサービスの差も知り尽くしている。本当に手ごわいお客様たちだ。

 3つ目は、自分の特徴もよく知っているということだ。

 ここにシミがある、こんなシワも多くなった、たるみさえ解消できれば……等々、自分の肌の悩みもよく知っており、「クリニックではないのですぐに解消しないのはよく分かっている。でもこれ以上進まないように……」と化粧品の限界も知っており、原料などの知識レベルも高い。

 こんなお客様に信頼されるためには、1人ひとりのお客様の状況をよく理解して、どういう悩みを持っているのか、どうなりたいかを丁寧にヒアリングし、お手入れの好みや肌質を理解して、使用すべき商品とお手入れ方法をアドバイスするというような「悩みに寄り添う販売方法」が必要だと思う。

 そういう信頼できるアドバイザーがいれば、この「少し贅沢なジプシー状態」から抜け出してもらえるのではないだろうか。
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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